マテリアル・マネジメントのフレームワークを考える


マテリアル・マネジメントは誰の課題か

前回の記事では、工場の一番の課題はマテリアル・マネジメントだと、あらためて感じた、と書いた。課題というのはいろいろな切り口とレベルで存在する。人手不足も課題、コスト削減も課題だ。設備老朽化も、品質向上も深刻な課題であるに違いない。ではなぜ、あえてマテリアル・マネジメントを一番だと取り上げるのか。

それは、この課題を認識し、受け取る人が見当たらないからだ。人手不足は工場長や人事部門が、コスト削減は工場経理や原価管理部門が、設備は保全部門が、それぞれ見ている。もちろん課題解決には、その部門だけでなく、他部門の協力もいる。だがオーナーシップは比較的、明確だ。

それに対して、製造現場の4Mの中で、マテリアルだけはオーナーシップが不明確なのだ。他の3M、マシンは生産技術や保全部門が、マンは人事部門が、メソッドは品質保証部門が見ている。マテリアルは資材部門が担当だろうって? だが資材部門は通常、発注してから資材倉庫を払い出すまでが仕事である。工場の中にある仕掛在庫までは、面倒見ないし、面倒を見切れない。





マテリアル・マネジメントのフレームワークとレベル

ところで、随分前に「『在庫管理』には二種類ある」 という記事を書いた。この中で、「在庫量のマネジメント」と「在庫品のコントロール」は、同じ『在庫管理』という言葉で呼ばれるが、別の仕事だと書いた。日本語の「管理」は便利な言葉で、いろいろなレベルを包括的に、つまり区別せずにごちゃ混ぜに、指すことができる。

同様に、「マテリアル・マネジメント」とひとくくりにした仕事を、もう少し仕分けしてみよう。たとえば、マネジメントとコントロールとハンドリングにレベル分けできるだろう。

マテリアルのマネジメントとは、「何を・どんな資材を」かを決める仕事だ。その物は何で、どんな形状・材質・機能を持つもので、自社の業務ではどこにどれだけ、使うのか。そしてどのように供給するのか(自社で作るのか買ってくるのか)。その適正な品質基準・価格レベル・納期はどれほどか。さらに、同種のマテリアルはどれとどれか、共通化すべきなのは何か。こうしたことを計画し実現し、随時アップデートしていく仕事だ。

マテリアルのコントロールとは、それぞれのモノの量と、質と、場所を決めて、トラッキングする仕事だ。そして、似たようなモノ同士の識別もしなければならない。さらに、同じモノの中のロットとか個物まで、識別する必要もあるだろう。

そしてマテリアルのハンドリングとは、そのモノを物体として扱う仕事である。いかに扱うか(どの向きに置くか、どこをつかむのが良いか、どんな容器や包材が適切か、など)を工夫し、実際にそれを運んだり保管したりする仕事である。









マテリアル・マネジメントの6つの問い

上記のように考えると、ある工場のマテリアル・マネジメントの成熟度を知るために、いくつかたずねるべき質問が思い浮かぶ。それは、以下のような問いだ。

1. 工場内で扱うモノはすべて、コードと呼び名が決まっていますか?
2. 工場内で扱うモノはすべて、識別の方法(現品票や手書きのマーキング等)が決まっていますか?
3. 工場内で扱うモノ(材料・中間部品・製品)はすべて、決まった置き場所がありますか? ない場合、当座の置き場所は誰が決め、使用者にどう伝えますか?
4. 工場内で扱うモノはすべて、使いやすい置き方・容器・ケース等が決まっていますか?
5. 外部から購入するモノは全部で何種類ありますか? そのうち、常備品と都度手配品の比率は何%ずつですか?
6. 工場内で扱うモノはそれぞれ、見守る担当者がいますか? 破損したり必要なときに無かったら、必要な手立てを取る人です。





モノは札束と同じ、オーナーシップが必要である

最後の問いには、ちょっとだけ注釈がいると思う。工場の中にはさまざまなモノがあふれている。だが、本当はモノがそこに存在するには、お金がかかったし、価値があるから存在しているはずだである。だから、モノを見たら札束と思うべきなのだ。モノが職場に落ちていて、誰のものかも分からずどう使うかも分からないのは、おかしい。職場に札束が落ちていて、誰も関心を持たなかったら、どうかしている。

だが、もちろんそれは、モノの「管理」の作業も判断も全部、現場の担当者に丸投げすべきだ、という意味ではない(ちょうど、誰も札束を丸投げしないように)。機械設備をケアするように、モノをケアする担当が必要だ、ということだ。

原料から中間部品、製品まで、きわめて多種多様なモノが、工場内を行き交っている。モノの流れる場が、工場だ。モノづくりを適切に、効率よく進めたかったら、モノのマネジメントが必須だ。そしてマテリアルは、非常に多くの部署と機能が関わってくる。協力の産物だ。でも、組織の中での協力には、やはり決断と責任を担う、オーナーシップが必要なのである。





<関連エントリ>
理系も文系も、INCOTERMS(取引条件)を理解しよう」 (2026-7-14)
『在庫管理』には二種類ある」 (2011-07-07)