「実践的MES導入ガイド」9月刊行と、出版記念シンポジウム(9月8日)のお知らせ
製造実行システム(MES)に関する新著を、9月に出します。佐藤知一・阿部洋平 編「実践的MES導入ガイド ~ 製造実行システムが工場を強くする」一般財団法人エンジニアリング協会「次世代スマート工場」研究会 著です。
出版元の近代科学社の HPに詳細な目次紹介のページがあります。 またAmazonからもすでに予約可能になっています

わたしは2000年に工業調査会から出た、中村実・正田耕一編『MES入門』に共著の形で執筆ました。もう四半世紀も前のことです。現在はすでに出版社も無くなり、本は絶版ですが、今でもAmazon等で古書が取引されています(それも、それなりの値段で)。この進展の激しいIT業界で、ふた昔以上も前の本が、いまだに求められているのは不思議です。MESに関するまとまった入門的書籍は、長い間これしかなかったからでしょう。
その後わたしは、ご承知の通り(一財)エンジニアリング協会で「次世代スマート工場」研究会を2018年に立上げ、3年ほど前からMESに関心のあるメンバーを募って、MESストラテジックプロジェクトを進めてきました。おかげさまでその活動は『MES/MOM導入のための標準業務一覧』の形で結実し、経産省の『ものづくり白書』にも取り上げていただきました。
その余勢をかって、という訳でもありませんが、プロジェクトに関わった仲間およそ20人の協力を得て、現時点における最新の包括的なMES入門書を書こうという事になりました。しばらくは「新MES入門」という仮タイトルで動いていましたが、メンバーの提案でよりアピール力のある題名として、「実践的MES導入ガイド ~ 製造実行システムが工場を強くする」が選ばれました。
編者として名を連ねる阿部洋平さんは、アビームコンサルティングのエキスパートです。元は大手製造業で生産管理の実務に携わっていた方ですが、その後ITベンダー等を経て、現在はコンサルタント業界で活躍中です。
もともと、このMESストラテジックプロジェクトは、3年前の研究会の「スマート工場シンポジウム」が終わった後の会場で阿部さんが、「佐藤さん、日本では今も『MESの標準11機能』という、ひどく使いにくい標準が出回っていますが、何とかできないでしょうか」と発言されたのがきっかけになっています。すると、近くにいたMES関係者が、「そうなんですよ」「自分もそれをベースにしたRFPを受け取って、どう回答したものか悩んでます」と異口同音に発言し、かくてプロジェクトに進展した次第です。
いわゆる『MESの標準11機能』は、米国MESA Internationalが90年代終わりに制定したもので、先の『MES入門』でも詳しく解説されています。しかし正直、日本の製造現場では分かりにくいし、使いにくい。それが長年生き残ったのは、結局、一部の業界を除いては、まともにMESが普及してこなかった証左なのでしょう。
そうした状況は、コロナ後の数年前から、明瞭に変化しています。製造現場で人手不足が深刻化し、ベテラン熟練工は引退し、以前は作れたはずの製品が、次第に同じ品質では作れなくなりました。加えて、品質トレーサビリティをはじめ、工場への要求事項は増えるばかり。その多くが、「記録・情報処理」にかかわる事柄です。だからこそ、25年たった今、MESの必要性が再認識されたのでしょう。
新著は、製造業のユーザー企業、ITベンダー、そしてエンジ系企業やコンサルティングなど、MESのあらゆる側で関わってきた20名ほどのプロフェッショナル達による、共著です。MESの機能詳細とデータ構造、『標準業務一覧』に準じた工場業務への適用手法と範囲(生産管理、製造、品質管理から、購買・資材、工場経理まで)、そして隣接システムとの連携など、コアの部分の解説だけでもかなり充実しています。
これに加えて、業界別のMESの特性と事例(組立業界、航空宇宙、自動車、自動車部品、食品、医薬、半導体、化学)を、ユーザ企業を中心に記述した点も特徴です。投資判断上重要なMESの導入効果についても1章を割き、さらに「工場のハードウェアとMES」の章では、IT技術者の視点に入りにくい建築・設備面とMESの関わりを解説しています。データドリブン製造ではMESデータモデルと工場データ基盤、そしてその活用方法を述べます。プロローグとエピローグにあたる第1章と9章は、わたしが全体をまとめる形で執筆しました。
本書の対象読者層は、もちろんまず、製造業においてるデジタル化・スマート工場実現を推進する方々ですが、加えて、製造関係のIT技術者や、MES/MOM導入を支援するコンサルタントやITベンダーのエンジニアも対象としています。そして、製造業の経営企画部門の方にも、ぜひ読んでいただきたいと考えています。製造現場のMESシステムという、本社からはちょっと実像の分かりにくい仕組みの意義と価値を、ぜひ理解して経営判断に活かしていただきたいからです。
本書は9月刊行予定です(電子版が先行し、紙の書籍はそれを追う形になります)。これを記念して、(一財)エンジニアリング協会「次世代スマート工場のエンジニアリング」研究会では、記念シンポジウムを下記の通り開催します。
演者には、中心となって本書をまとめたプロジェクトリーダーである阿部洋平さんをはじめ、MESの構造と機能解説を担当したダッソー・システムズの廣谷満さん、MESと工場ハードウェアの融合をまとめた竹中工務店の山中一克さんほか、主要な執筆陣がそろい踏みし、「業界別に見るMESの実像」の座談、そして全体をまとめるパネルディスカッションを予定しています。わたし自身も、「なぜ今MESなのか」について簡単に講演いたします。
ハイブリッド開催形式で、東京・神谷町のエンジ協会オフィスのほか、どなたでもオンラインで日本中から参加いただけます。無料ですので、ぜひご参加下さい。
<記>
「『実践的MES導入ガイド』刊行記念シンポジウム」
主催:(一財)エンジニアリング協会 「次世代スマート工場のエンジニアリング」研究会
協賛:株式会社 近代科学社
日時:2026年9月8日(火) 13:00〜17:00
形式:会場聴講とZoom配信のハイブリッド
定員:【会場】40名 【オンライン】300名
内容詳細と申込:下記ページをご参照ください。
https://www.enaa.or.jp/seminar/82878
大勢の方のご来聴をお待ちしております。
(一財)エンジニアリング協会 主席研究員 佐藤知一