ANAに乗るおじさんの日記


14日間世界一周というのをやった。やりたくてやったわけじゃない。仕事なのだ。パリを発って、フランクフルトに行き、そこで乗り換えてベネズエラの首都カラカスに行った。さらに国内便でバルセロナ市へ。ここでしばらく仕事をした後、日本に戻り、横浜本社に出社した後、最後にパリに戻る。これでちょうど2週間。

いくら飛び歩くのが仕事だとはいえ、ベネズエラで一週間の建設現場での仕事を終わり、メキシコ湾をわたってアトランタからシカゴに到着するころには、さすがに飛行機にも機内食にもうんざりしていた。

最後はシカゴ発の全日空便だった。

99夏の熱気の残るシカゴでは夜の街をぶらぶら散歩し、10時すぎてから夜の歩道の席でタイ料理を食べた。胃の疲れが少し和らぐ気分だった。シカゴのオヘア空港は美しい。さすが建築の街の空港だ。しかし、日本行きの、日本の航空会社の機内に乗り込むと、そこはまことに日本そのもの。このギャップにはいつもながら面食らう。




今回のANAの便は、まったく同じ顔をした6人の客室乗務員がサービスについていた。全日空ではスチュワーデスの採用基準に、丸顔で長い髪を頭の後ろに団子状に巻き付けていることを明文化しているにちがいない。それにしてもここまでくると殆ど赤塚不二男の世界である。だから日本の世界なのだが。

「お飲物は何がよろしいですか。」と、ビジネスクラスには聞きに来てくれる。ぼくは、シャンパンをオレンジジュースで割ったものを頼む。すると、どういうわけか、彼女は営業用微笑をたたえた顔で、シャンパンとオレンジジュースの入ったコップを、別々に二つ持ってきてくれるのだった。

面食らったぼくの顔を見て、何か間違いが起こったことに気がついたらしい。しかし、いいですよ、もう持ってきちゃったんだし、とぼくは答えて受け取る。そしてオレンジジュースのコップに少しずつシャンパンを注ぎ足して飲み始めた。

しばらくすると彼女がふたたびやって来て(もしかすると別の彼女だったかもしれない、なにしろ全員同じ顔なのだ)、お代わりはいかがですか、とたずねる。何のお代わり? 

あのね、これは余計なことだけれど教えてあげる。

ミモザという、黄色くて小さな花をたくさん付ける樹があるでしょう? シャンパンをオレンジジュースで割った飲み物は「ミモザ」といって、フランスのカクテルなんです。ぼくはわりとこれが好きなんだけれど、初夏のパリでまだ日射しが残っている時分に飲むととても美味い。

そして本当はね、これはあなたのような若い女性が飲むものなんだ。今度こっそり作って味見してごらん。きっと好きになるから。

しかし、もちろんぼくはこんな気障なセリフを口に出して言ったりはしない。彼女だってこんなわけわかなことを、知ったかぶりのオジサンから習いたいとは思わないだろう。そして日記に書くにちがいない。今日もへんてこなオジサンの客に疲れたと。

だからぼくだって、こうして日記に書いているわけです。