設計思想のある工場を見よう 〜 工場見学つき合宿型研修セミナー(6月4-5日・愛知)のお知らせ


  • その工場に設計思想はあるか



スイスに本部を置く「世界経済フォーラム」(World Economic Forum、略称WEF)は、ダボス会議の主催者として有名ですが、それ以外にも様々な領域で産業の現代化のために活動をしています。その一環として、数年前から、世界中の先進的工場を選んで、”Lighthouse“の称号を与えてきたことは、昨年も記事に書いたとおりです。




しかし世界全体では200近くの工場がLighthouseに認定されているのに、日本にはまだ、3ヶ所しかありません。少ない理由については、WEFが調査する意向とも聞いていますので、本当はその結果を待つべきでしょう。ただ、わたし自身の仮説を述べておくと、こうなります:「日本の工場は、技術やパフォーマンスは優れているが、その理念や設計思想を言語化できていないため」、であると。




欧米人はある意味、理念先行型と言ってもいいと思います。現実の技術よりもまず理念が大事で、ちゃんと理念が説明され理解できないと、動けない傾向があります(少なくともホワイトカラー層は)。これは言葉にせずとも、以心伝心でコラボしながら動ける日本とはかなり違う文化です。




とはいえ、じゃあ日本企業は言語化していないだけで、工場に関しては皆、確たる考えを持っているかというと、そこには疑問があります。仕事柄、それなりに多数の工場を訪問し見てきましたが、どうしてこんな配置レイアウト、機械選定、建屋設計、物流動線なんだろうか?と疑問を感じるケースが少なくありません。




おそらく増改築と、製品の変化に伴うライン移設・撤去などの繰返しの結果、そうなってしまったのでしょう。ただ、そうした(ちょっといい方は失礼かもしれませんが)「温泉旅館」型工場は、設計思想云々より以前に、オペレーションが整然と流れにくい状態にあります。そもそも、生産マネジメントやコントロールなど、工場のソフト側に、設計思想がないケースが多いのです。そうなってしまった理由は、いわゆる経営の『コストセンター』論とコストミニマム・ポリシーなのでしょうが、ここでは深入りしません。




  • 優れた工場を見学する意義とは



工場見学とは、優れた工場を見るものです。自社より劣っている工場を見る意義はありません。ただし優れた工場は、簡単には真似できないのも事実です。なぜなら、工場の設計思想に基づいて、複数の大技の組合せでできあがっているからです。




見ると「すごいな〜」と感動はしますが、大技は簡単に取り入れられません。真似できるのは、小技だけです。自社に帰って、見学の成果を聞かれても、感想は言えますが、即効性のある答えは限られるのが普通です。




それでも、優れた工場をを見学する意義はあります。それは、自社の問題を客観的視点から見直す契機となるからです。自分の工場にはいろいろ問題がある。ただ、それは互いに絡み合っていて、解決の糸口がつかめない。その際に、リファレンスとなる工場があると、比較できるようになります。比較は分析の第一歩だからです。




そしてもう一つ。こうした工場見学は普通、いろいろな企業からの参加者と一緒に行います。それは、志ある同輩と出会い、議論ができる場となる可能性があるのです。ちょっと大げさに言うと、現在の製造業の雰囲気は、幕末の諸藩の状況に少し似ているかもしれません。各社(各藩)は歴史や経緯を背負っていて、身動きのとれない煮詰まった状況にある。国全体に多分、考え方を変えるべきところがある。そのなかで志をもって活動する人がいると分かるだけで、少しは勇気づけられるではありませんか。




  • 他業界の工場から学ぶことはできるのか



今回のお知らせでご紹介する「スマート工場構想企画人材育成セミナー」の一番の目玉は、工作機械メーカーであるオークマ本社工場(Dream Site)の見学です。それも、この工場プロジェクトをリードされた、領木正人特別顧問(元副社長)の講演つきです。




我々、(財)エンジニアリング協会「次世代スマート工場」研究会では、これまで毎年、座学と議論を中心とした研修プログラムを開催してきました。昨年7月には、はじめて工場見学付き2日間コースの研修プログラムを、雪印メグミルク阿見工場さんのご協力を得て実施しました。それがとても好評だったため、今年も続けることにしたのです。昨年は北関東でしたが、今年はオークマさんにご協力いただけることになり、東海地方で実現できる運びとなりました。




ちなみに、オークマさんは工作機械メーカーですから、いわゆるディスクリート型の組立加工系の工場です。とくに中大型で重量もある金属部品などを扱い、精密加工・組立が要求され、かつ制御系も重要な点などに、特色があります。では、そういった業界以外の企業は、見ても得るものは少ないのかというと、決してそんなことはないはずです。工場見学では、固有の生産技術よりも、むしろ工場の設計思想と管理技術の考えを学ぶ機会になると思うからです。




研修プログラムの1日目は講義とグループディスカッション、2日目は工場見学と質疑という構成です。日立アカデミーさんのご協力のもと、初日は名古屋市内にある同社の会議室をお借りし、二日目に愛知県大口町のオークマ本社工場をバスで訪問します。




なお「合宿型」と書きましたが、東海地方にお住まいの方はもちろん、通いで構いません。逆に宿泊が必要な方は、プラス1万円で名古屋駅前のホテルを手配することも可能です。工場見学が目玉ですが、一応、オンライン受講も可能です。ぜひ多くの方のご参加をお待ちしております。




<記>




第6回 SP-T1「スマート工場 構想企画人材 育成セミナー




日時: 2026年6月4日(木)・5日(金) 10:00 ~ 17:00 事前登録制
会場受講: 28名  オンライン聴講:12名







講演者と内容:(予定・敬称略)




一日目




  • 製造業DX(スマート工場)の目的:DXプロジェクトとは何か? ・・・ 講師:渡辺 薫(ゴールシステム・コンサルティング)



  • 製造業における「基本的な業務・情報の流れと構造」、工場を動かす神経系統(システム)のあり方 ・・・ 講師:佐藤 知一(日揮)



  • 自動化から自律化へ - MES(製造実行管理システム)及びOTシステムを中核とした工場関連システムについて ・・・ 講師:菅原 一雅(ロックウェル オートメーション ジャパン)



  • 工場のサイバーセキュリティ ・・・ 講師:濱口 孝司教授(名古屋工業大学)



  • 【演習】生産進捗のバタバタの原因を考える ・・・ 全講師



二日目




  • スマートファクトリーのハードウェア・ソフトウェア ・・・ 講師:オークマ様



  • オークマ㈱本社工場(ドリームサイト)見学



  • パネルディスカッション:「工場のスマート化プロジェクトの始め方と進め方」 ・・・ 講師:オークマ様および講師陣



  • 質疑応答&ふりかえり ・・・ 全講師



セミナー詳細: 下記をご参照ください(申込みは4月8日からです)




https://www.enaa.or.jp/seminar/81040




<関連エントリ>




『第5回スマート工場シンポジウム』(9月3日)開催のお知らせ」(Lighthouse工場について) (2025-07-20)