さようなら、留学生相談室。

先週の7月12日(土曜日)、代々木にある日本語学校「青山スクール」で、小さな集まりが開かれた。それはボランティア・グループ「留学生相談室」の“お別れパーティ”だった。狭い部屋に集まった老若男女・国籍・肌の色もさまざまな80人近い参加者は、口々に、このボランティア集団が17年間の活動を終えて解散することを惜しんだ。その多くは、海外から日本にやってきた留学生や元・留学生の人たちだった。

私のこのサイトは、開設当初から、「留学生相談室」の紹介ページを置いていた。生産スケジューリングとは何の関係もない、唐突な取り合わせだったが、相談室の中心メンバーと親しい関係にあるため、スペースをお貸ししていたという形だ。それも、スタティックな案内メッセージと地図を置いただけで、掲示板なども特別作らなかったので、どれだけ相談室の広報に貢献できたのかは心許ない。

留学生相談室の17年間の総相談件数は41,264件に達する。来室者は全部で4,957名。その国籍はアジア43カ国を筆頭にアフリカ・ヨーロッパ・北米・南米・オセアニアなど計111ヶ国・地域におよんだ。留学生たちに知られているだけでなく、文部科学省や多くの大学・日本語学校から頼りにされる存在であった。

留学生の抱える問題とは何か。表面的に分類すれば、住居問題・保証人・公有・在留資格・奨学金・諸トラブル、などに分けることはできる。しかし、その中身を知れば知るほど、私は日本という国が、そこに住む人たちの考え方が、不思議でならなくなる。例えばあなたは保証人制度とはどういったものか、ご存じだろうか?

留学のためには、海外から日本に入国しなければならない。そのとき、正しいビザで入国するには大学の入学証明が必要だ。ところが、多くの大学は、入学時に「身元保証人」を全入学生に要求するのである。でも、初めてやってきた国に、誰がどうやったら保証人を捜すことができるというのだろう? どうしてこんな馬鹿げた不合理な制度を、『理性の府』と称しているはずの大学が改善もせずにいるのだろうか。それを何十年も放置しておいて、「留学生10万人計画」などという政策を掲げる省庁は、いったいどこの何を監督しているのだろうか。

留学生たちの抱えるこうした実際のトラブルを、強制的に解決する権力も経済力も持たない、一有志団体が、ここまで頼られた理由は何か。それは、なんといっても、誠実に留学生の話を聞く・しかし相手を甘やかしはしない、というスタンスの明快さだったろうと思う。自分の問題は、結局自分で決めて自分で解決するしかない。それが、大人への道である。そして、相談室は、たしかにそれを情報面のみならず心理的にもバックアップしてくれたのである。

留学生相談室が活動の停止を決めたのは、昨年の後半あたりからのことだ。中心ボランティア・メンバーの高齢化なども背景にはあるが、直接のきっかけは、東京都からの助成金が、都の予算見直しのためにうち切られると決まったためである。ボランティア・グループとは言っても、継続的で足の地に着いた活動のためには、都内に多少のスペースを構え、専任の事務局員をおく必要がある。その運営維持には、篤志家の寄付だけでは残念ながら十分ではない。’89年以降から続いた助成金が、大きな経済的支えとなっていた。

海外から若い夢と希望を持って来日した学生たちの相談のために、わずか年間約250万円程度の補助をする余裕さえ、この経済大国には、もはや無いということらしい。信じられないことだが、まことに残念だと言うしかない。

留学生相談室は、2003年6月末をもって閉室した。電話相談機能だけは、まだ残している(代表:03-3426-0721)。多くの来客は、これが最終的な解散ではなく、一時的な停止であるよう、望んでいた。私も、そう思いたい。そして、最後にもう一度、言おう。

“長い間ありがとう、そして、さようなら、留学生相談室。”

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