SKU (Stock Keeping Unit)とは何か

こんにちは、SKU

SKU (Stock Keeping Unit)という言葉は、物流センターのエンジニアリングの仕事で、はじめて知った。そこでは、物流センターのキャパシティ(規模)を示すのに、SKU数=○万、在庫点数=△△万点、といった表現が、設計基本条件として使われていた。工場ならば月産何百台とか年産何万トン、という形が普通なのに、保管と入出荷を機能目的とする物流センターでは、ずいぶん異なるのだ、と知った。

SKUは、B2Bの製造業(産業機械メーカーや部品メーカー等)の仕事をする上では、あまり縁のない概念だった。 そこでは1つの製品は、あくまで1つの製品であり、他の製品や部品とは明確に区別される。

ところが、消費者向けのアパレルの業界に行くと、事情がずいぶん異なる。 アパレルでは、同じ1つのデザインのTシャツに対して、S、M、Lといったサイズ違いのバリエーションが必要になる。ワイシャツなどは、同一の布地とデザインでも、袖丈と首周りのcm単位の組み合わせで、結構な品種数になる。 そして、これら細かなバリエーションの一つ一つを区別していくために、SKU (Stock Keeping Unit)という 概念とコード体系が必要になるのだった。

日用雑貨品や化粧品・トイレタリー業界でも、同じ製品ながら色や香りの違い、あるいは内容量の違いなどの、バリエーションが存在する。これらもSKUで区別される。

SKUは「製品のバージョン」ではない。たまに誤解する人がいるのだが、同一の製品でもたしかに、仕様変更によってバリエーションが生じる。しかし、バージョンは基本的に入れ替わっていく。SKUのようなバリエーションは、最初から複数存在し続ける。


製品とSKUとは、1:Nの関係か

同一製品の中で、SKUを区別するかどうかのポイントは、在庫引当てである。顧客の個別ニーズがあったときに、その品目の在庫を引当てて出荷できるのかどうか。青のTシャツを注文したお客様に、オレンジのシャツを渡す訳にはいかない。Mサイズのお客様にSサイズを渡す訳には行かない。デザイナーや作り手の目から見ると「同じ素材・同じデザインの製品」のバリエーションにすぎなくても、需要に引当てできないならば、区別が必要なのだ。

このようなケースでは、製品とSKUとは原則として、1:Nの関係になる。1製品に複数SKUである。RDBを使った業務系ITシステムの仕事をしている人は、そうするとSKUのマスタは製品マスタのサブテーブルになるな、と考えるかもしれない。複合キーの相手としては何を取るべきか。単純な連番もあるが、パターンが決まっているならばサイズ区別とか色区別のコードなどもありうるだろう、考えるはずだ。

ところが、日用雑貨品や食品・化粧品・トイレタリーなどの業界に行くと、これがN:1にある場合がしばしばある。それは「セット組」商品である。3本セットとか、赤と白のセットとか、小売店ではよく複数商品を同梱し、セットにして売っている。これらセット組も、SKUである。同一製品の3本セットなら、一品種のバリエーションだが、異なる製品のセット組となると、製品:SKU=N:1である。しかもセット組もいろいろ可能だ(たとえばデパート歳末売出しの「お歳暮セット」を想像してほしい)。こうなると、N:Mになることもある。

このような関係を、RDBでどう表現すべきか。すでにお気づきかもしれないが、セット組SKUと個別製品の間には、BOM(部品表)の関係づけが必要になるのである。このようなセット組み作業は工場よりも、物流センターでの「物流加工」として行われることが多い。つまり物流加工のBOMはSKU単位ということになる。


PS&I計画上の扱い

さて、B2C企業における計画業務において、最上位の計画となるのは、PS&I(生産販売在庫)計画である。製品とSKUは、そこではどう位置づけられるのか。

B2Cにおける計画立案の起点は、需要予測である。B2Cは原則として見込生産であり、注文を受けてから工場で作るようなことはしない(そんなことをしたら、納期でライバルに負けてしまう)。そして需要予測は、通常はSKU単位ではなく、製品単位でまとめて行う。

同一製品内のバリエーションの需要比率はある程度、推定可能なことが多い(たとえばS/M/L/LLサイズなどの比率は、日本人の体格上の構成比で決まる)。だから個別SKUの単位で予測するより、製品でまとめる方が手間も減るし精度も上がるのだ。

他方、生産計画はどうか。サイズ違いやカラー・バリエーションなどがある場合は、SKU単位に計画せざるを得ない。BOMが異なるためである。

なお、ここで製品とSKUの関係は二種類ある事に、あらためて注意いただきたい。サイズや色のバリエーションは、製造段階の最初から、SKUを区別しなければならない。BOMが違うからだ。それに比べて、セット組などのSKUは、包装段階ないし物流加工段階でできあがる。後者の場合、製造段階までは製品の単位で生産計画を作れば良い。物流加工は工場外で行われることも多いので、その場合、工場はSKUを忘れて製品単位だけで動くことになる。

そして在庫計画は、もちろんSKU単位である(そもそもSKUは「ストック在庫の単位」という意味だった)。このようにPS&I計画では、生産・販売・在庫で区別の粒度が異なり、相互変換が必要になることを忘れてはいけない。だから、PS&I計画にはそれなりの機能を持つITパッケージが役立つのである。


製品(品目)の同一性とは

わたしは以前から、製品も部品も購入材料も、すべて「マテリアル・マスタ」に登録すべきだ、と主張してきた。製品は製品マスタ、部品は部品マスタ、購入素材は材料マスタ、のように分けて登録し、コード体系も別々に発番する企業も、よく見かける。しかし売るかどうか、買ってくるか自社で作るか、などはビジネス環境によって変わりうる。そのたびにマスタ間を移動したり重複登録すると保守が大変になる。だから統一したマテリアル・マスタに、統一した品目コードで登録しよう、と。

では、SKUのマテリアル・マスタ上の扱いはどうなるのか。もしもSKUが完全に工場の外側、つまり物流と販売のみで用いられるなら、SKUのみを別マスタに持つ方式も、一定の合理性はあるだろう。ただしその場合、製品とSKUが物流・販売業務でごっちゃにならない、という条件がつく。すべての製品に、物流・販売段階でSKUコードが振られ、SKU単位で出荷引当ても転送指示も行われる。アパレルメーカーは、製造は完全に外注委託する場合が多いので、このケースに該当する。

逆に言うと、この前提が当てはまらない場合、製造と物流と販売にまたがる業務をする企業では、SKUも製品も、マテリアル・マスタに登録すべし、ということになる。なぜなら、在庫引当での区別がSKUの基本だからだ。そして、前にも書いたが、「在庫管理したいモノは、マテリアル・マスタに登録する」が原則である。

モノの同一性の区別が、マテリアル・マネジメントの基本である。部品材料であれば、製造において完全に互換性を持って使えるものは、同一の品目である。そして外部に売る製品においては、在庫引当可能なものが、同一の品目となる。そして、それ以外の要素を妙に持ち込まない方が良い。サプライヤーの違いとか、製造工場の違いとか、販路の違いとかの要素である。

そして企業の旧来の業務慣習のために、開発と製造と販売で異なる粒度、異なるコード体系を用いてきた場合、最も細かい粒度を基準に品目コードを発番しておき、既存コードを併記する、という経過措置を取るべきである。そのようなマスタデータ整備は、地味で、時間と労力がかかる。だが、そのプロセスを通らないと、マスタデータが企業の成長の制約になりかねない。日本の企業経営者が意外に気づかないボトルネックが、こんなところに潜むのである。


<関連エントリ>
「同じモノか、違うモノか? - マテリアルの同一性問題をめぐって」 (2016-02-28)
「意味無しコードのすすめ」 (2006-01-29)