R先生との対話(つづき) - リーダーシップの第4の軸
(前回のつづき)R先生を訪問して、リーダーシップの3つの軸からなる「知性型」「意志型」「強運型」の類型論(『リーダーシップの3タイプ--その価値観と望まれる能力』参照)を説明したわたしは、“軸が一つ欠けている”と先生に指摘される。
--もう一つ、軸、ですか?
「そうだ。もっとも大切な軸がな。それは“協働”だよ。それがなければ、どんな仕事も意味を失う。君のプロジェクトってのはまさか、一人でやるものか。」
--そんなことはありません。でも、それってリーダーシップとは別次元の話じゃないでしょうか?
「そうかな? 考えてもみたまえ。知性型のリーダーがどんな立派な計画を立てようが、皆がそれに向かって協働しなければ、物事は予測通りになるかな? 意志型のリーダーがどんな号令をかけようが、皆が協働しなければ何の足しになるだろうか。」
--それでも、運不運はどうします? 強運型リーダーは協働とは関係ないでしょう。
「じゃあ聞くが、“運のいい人”ってのは、どんなやつのことをいうと思う?」
--そりゃあ、大事なときに、うまくチャンスが回ってくる人のことでしょう。良いポストをオファーされたり、上等な客に巡り会えたり、ピンチの時にうまく誰かが助けてくれたり・・。あれ? 待てよ。
「やっとわかったかな。運の強いやつというのは、つまり、チャンスを膨らますべき時に他人が助けてくれる人のことをいうんだ。運のない奴というのは、肝心なときに人に見捨てられるような人間のことをいう。運というのは、人間の集団によって大きく左右されるものなんだ。」
--・・そういえば、セレンディピティー(偶然の発見学)に関する本を読んでいたとき、良い友を多く持つことは幸運な発見に導く秘訣だ、という話をよんだことがありました。
「そうだ。だから君も、人から助けてもらえる人になりなさい。そのためには、単に待っていてはダメだ。自分から、貸し借りや損得抜きで人を助けなさい。そうしたことを、むしろチャンスだと思いなさい。それが協働意識を育てる第一歩なのだよ。」
--でも、競争意識に絶えずさらされているサラリーマンとしては、むずかしいですよね・・。
「競争と協働は、社会の二大駆動力だ。どちらもなくてはならない。競争意識はある意味で文明の進歩をうながした。我々が今こうして快適に暮らせるのは文明のおかげだ。でも、競争意識だけが独走すると、諍いや騙し討ちが増えて、世の中はろくな事にならない。会社というのは元々、個人が一人だけでは達成できない大きな目標のために協働してつくったものじゃないか。」
--会社の中にもポジションの上下があって、それをめぐって競争がありますが。
「それもまた組織を動かす一つの仕掛けなのだよ。また、たしかに出世しやすい人、出世しにくい人というのはあるな。出世しやすいというのは、たとえば--」
--たとえば?
「背の高い男だ。」
--背の高い!? それって、どういうことですか?
(小柄に生まれついたわたしは、思わず長身で体格の良いR先生を見た。先生は一時はある会社の経営陣にいた。)
「なんだ。君は今まで気づかなかったのかね? あるポジションがあって、二人の候補者がいるとする。いろんな条件はほぼ互角だとしよう。そうすると、背の高い方が選ばれる傾向がある。そうだな、四分六くらいで有利かな。」
--そんな馬鹿な!
「上背がある方が、なんとかく信頼感があるんだろうな。だから個人レベルの競争なんて運不運だと言っただろ。背の高さなんて自分じゃ決められない。でも、君も知ってる会社の経営層を見てごらん。背の高い男の比率が、一般社員より少し多いんじゃないか。それが人間の無意識の傾向なんだ。それにな、女は圧倒的に不利だ。」
--女性が不利って、わたしがそんなこと授業で口走ったりしたら総スカンですよ。下手したらクビになりかねません。
「それが良いことだとは言ってない。だが、これは事実だ。日本は圧倒的に男社会だからな。平均的な男は、女性が怖いんだ。だから差別する。」
--怖いんですか? そうかなあ。こわかったら差別する必要はないでしょう。
「人間というものは、自分と異質で、かつ、ある程度の数いる者達が怖いんだ。異質とは、見かけも違う、考えてることもわからん、そういう人間だ。それが希にで現れるだけなら、単なる個人的偏見ですむ。でも系統的に繰り返し出現すると、無意識に恐怖心を抱く。これが差別として社会的に固定化される理由だ。男から見ると、女はその典型だろ? 日本じゃ、外国人もそうだ。差別というのは、恐怖心が薄らいで慣れるまで続くのだよ。えーと、何の話だったかな?」
--・・リーダーシップの『協働』軸の話でした。
「そうか。君の得意のセリフに、“戦略とは仮説である”というのがあるよな。それから、何だっけ、“計画=予測プラス意志決定”か。あれはな、結局同じ一つのことを言っている。マネジメントの意志決定というのは、いつでも不確かな状況下で迫られる、仮説への賭けのようなものだ。
しかし、いったん何かに賭けたら、皆でその仮説が現実となるように協働していくのが仕事なんだ。仮説が合ってるか合ってないか、客観的な立場で観察・判断すべきものじゃない。仕事は化学の実験じゃないんだからな。“仮説が合うように現実を動かしていく”ことが仕事なんだよ。そのために、皆が協力するのだ。」
--そうすると、このリーダーシップの三角形はどうなるんでしょう。もう一つ次元を加えて、三角柱になるのかな? ・・いや、そうじゃなくて、四面体にすればいいのか!
「その手のマンガは、君の得意技だろうから任せるさ。だが忘れないで欲しい。仕事は一人でやるもんじゃない。君の頭の中は、マネージャーと、マネージされる人との二階層で仕事が出来上がっているようだな。」
--でも、マネジメントとは、人に仕事をしてもらうこと、でしょう?
「そこだ! 君の問題は。『人に仕事をしてもらう』じゃない。『人とともに動く』なんだ。そこが分からない限り、君には本当のマネジメントは分からないよ。人とともに動いて、どんな結果が出ようと大丈夫と腹をくくっておれば、しぜんと道は開けるさ。」
--腹をくくる・・もしかして、それが先ほど出されたリスク対応の宿題の答えですか?
「おっと、口が滑ってしまったな。その通りだ。リスクへの態度で一番大事なこととは、『腹をくくる』ことだ。どんな管理表を作って、どんな対策を考えても、リスクというのは最後まで残って、無くならん。それは自分が全知全能ではないからだ。それで、思わぬ事象が起きて、責任を問われたら、どうする?
それもよし。かりにゼロになって振り出しに戻っても、また自分で道を切り拓こう。そう覚悟できるかどうかが、決断の質を決めるのだ。君は、ビジネスマンとして、中間管理職として、腹はくくっているかね?」
--はい。・・いや、あの、どうでしょう。
「しっかりしなさい、いい年をして! 君だけじゃない。人とともに動く、腹をくくる--もっと大勢の人が、この気持ちになれば、まだまだこの国は捨てたものじゃないよ。」
“R先生との対話(つづき) - リーダーシップの第4の軸” に対して3件のコメントがあります。
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漫画は君の特技だろ!には思わず笑いました。
読んでいて、もうひとつ私自身で思ったのが、
「能力の無い人を動かすノウハウ」
ではないでしょうか?
全ての部下が有能であるわけではないので、管理表を提示したり、チェック項目を入れたりと。自分が出来るのになぜ?できないのだ?といつも不思議に思い、対策をしないでいると、協動の「速度」が落ちる。
零細企業などは数人のチームだから、大組織のような仕組みは組めないので、いかに「自分で動くか」でしかないけど、読んでいて、とてもためになりました
>>読んでいて、もうひとつ私自身で思ったのが、
>>「能力の無い人を動かすノウハウ」
>>ではないでしょうか?
もはや、「能力のない人」は必要ありません。
動かす以前に居なくなってもらえばいいだけです。
おおお!なんとわかりやすい。
バカと箸を使いようと時代は過ぎ去ったのか!
トップが総合力として能力が低ければ、倒産する。
いなくなるとうのはとても当たっている。