製造作業を自動化するために必要なデータとは

  • カレーの作り方

『スパイスカレー』という言葉は、2000年頃から使われるようになったらしい。昔の昭和風のカレーライスは、具材を水で煮て、そこにカレー粉と小麦をベースにしたルーを加えて作った(「ライスカレー」という言い方もあったなあ)。これに対してスパイスカレーは、自分で配合したスパイス群を使い、水を使わず、しかもサラサラ感のある仕上がりになる。より、本場のインド風に近い料理だ。

わたし自身も、スパイスカレーという言葉がはやるずっと前に、米国でインド人の奥さんに教えてもらって以来、繰返し自分で作ってきた。カルダモン、ターメリック、クミン、コリアンダー・・といったスパイス類(粉ではなくホール=粒状のもの)も、昔は都心のデパートや外人向け高級スーパーでないと手に入らなかったが、最近は最寄りの店で買えるようになった。

作り方の概略をざっと記すと、次のようになる:

(0) スパイス類をフライパンでゆっくり煎ってから、乳鉢でひいて潰す
(1) フライパンに油をひいて、細切りの玉ねぎ、クミンシード、ニンニク、唐辛子を入れて、弱火で炒める
(2) これを鍋に移して中火で加熱し、鶏肉を入れてさっと炒める。さらに潰したトマトをいれ、沸騰したら、塩と(0)のスパイス群を加える。水は使わない。もしジャガイモや人参を入れたかったら(わたしは入れないが)、ここで投入する。
(3) 弱火でじっくり煮込む。カレーは時間が大事。それで味や香りが渾然となじむ。


分量をあえて書かなかったのは、全て目分量だからだ(笑)。途中で味見して、必要なら調整する。量も温度も、炒め方や加熱の時間も、自分が体で覚えている。


  • 製造作業の記述とは

さて、個人用のメモならこれでいいが、自分でもスパイスカレーを作ってみよう、と思った読者の方には、いささか不便だろう。

なんらかの作業を人にやってもらおうと思ったら、ちゃんと伝わるように、作業に再現性のある書き方が必要だ。つまり、体で覚えている「暗黙知」を、「形式知」化することが求められる。はんちくなコンサルなら、ここで『SEKIモデル』とかの話をしてカッコつけるのだろうが、そんな脇道は省略して先に進もう。

まず、当たり前だが、材料の正確な分量の記述が必要である。カレーを(仮に)4人前作るとすると、鶏肉600g、トマト3個、ターメリック大さじ2・・といった具合だ。つまり、最終製品に対する構成品目と数量の表で、これをBOM=部品表と呼ぶのは、当サイトの読者なら、とうにご存じだろう。製造作業の記述には、まずBOMがいる。

次に必要なのは、手順の記述である。「カレー作り」という製造工程は、上述するように4つくらいのステップからなる。それぞれのステップ、つまり最小の業務単位を、『作業Operationと呼ぶことにする。その工程は、どのような作業からなっており、どの順番でそれを行うのか、の記述が求められる。

その上で、各作業で必要とする、『製造資源Manufacturing resourceを規定する。製造資源とは、製造作業に使うけれども、材料と違い、作業が終わっても消費されずに残り、(洗ったり多少の修復作業はいるだろうが)別の作業に使えるような、再利用可能な道具を指す(英語では労働力はHuman resourceなので、要員もふつう含む)。

上記ステップ(1)の作業ならば、作業者(1名)、中型フライパン(1つ)、ガスコンロ小(1口)、フライ返し(1本)、といったところだ。これが工場ならば、作業者、金型、機械、工具などが並ぶことになる。逆に言うと、作業Operationとは、1セットの製造資源を占有する単位で区切るべき、ということになる。


  • SOP(標準作業手順)とRouting(工順)の概念

さて、これだけで十分だろうか? そうではあるまい。それぞれの作業において、火加減とか加熱時間といった、製造条件ないし製造仕様の記述が必要だ。そして、目視・味見・手応え等、簡易なチェック項目と、次の作業に進んでいいかどうかを決める合格基準もほしい。

つまり、1つの作業に付随して、様々な設定やらチェックやら、より細かな手順がある。こうした事を記述するのが、SOP(Standard Operation Procesure)=『標準作業手順』と呼ばれる情報である。さらに言うならば、実際のチェック結果はどうだったのか、記録できるともっと望ましい。後から確認できるからだ。

製造における一つの工程とは、こうした各作業と、それに付随する製造資源・SOPのセットを、直線的に順に並べた集合から構成されている。これを英語で、Routing(ルーティング)と呼ぶ。

Routingはふつう『工順』と訳されてきて、当サイトもこの用語にしたがってきた。ただ、工順という言い方は、複数作業の集合のことを指す場合と、その中での単純な順番を指す場合があって、いささか誤解を招きやすい。これをきらって、あえて「行程」と呼ぶ人もいる。だがこちらは、「工程」と同じ音だから、別の意味で混乱しやすい。もっと良い訳語があればと、いつも思っている。

なお、各作業の中間には、製造の途上の中間品が存在する。これは材料とも最終品目とも異なるモノだ。ただ、製造作業の途上でいったん生じるが、全量がすぐに消費されるモノは『ファントム』とよび、マテリアル・マスタやBOMにはふつう登録しないのが習慣である。


  • 製造作業を自動化するために必要な基準データとは

以上をまとめると、図のようになる。親品目のスパイスカレーと、子品目の材料a群・材料b群を結ぶ、一連の作業と付随する製造資源・SOPのセットである。

製造作業を自動化するためには、つまり仕事を機械にやらせるには、これらを文章記述ではなく、デジタル・データ化しなければならない。じゃあ、これをRDBで表現するにはどんなデータ構造にして、どうE-R図に表現するのがいいか、データ・モデリングの心得のある方はぜひ、考えてみていただきたい。

ともあれ、誰か不慣れな人間でも、ちゃんとスパイスカレーを作れるようにするためには、こうしたデータ項目にもとづいて、UI経由で指示を出せるようにしなければならない。さらにできれば、実績も入力できることが望ましい。こうした機能を提供するのが、『製造実行システム』MES = Manufacturing Execution Systemなのである。

以前の記事にも書いたことだが、ERP(基幹業務)システムと、生産管理システムと、製造実行システムMESは、その主たる目的が異なる。部品調達や製品販売などを受け持つERPは、主にコストをコントロールする。生産管理システムは、主に納期と在庫を采配する。では、MESは? 

MESは、詳細な作業と手順と仕様を通して、ある意味で、「正しく作ること」=すなわち品質を見ているのだ。再現性とは、製造品質の別名でもある。

そしてMESを支える基準情報(マスタ・データ)は、作業と手順(Method)、品目(Material)、作業者(HuMan)、製造資源(Machine)の、いわゆる4Mを記述している。製造の自動化のためには、いや、人の作業一般を自動化するためには、こうした4Mの形式知化が必要なのである。


<関連エントリ>

「製造業のトリレンマ・QCDを決めるのは誰か」 https://mgt-technology.info/33340696/ (2024-11-19)





製造作業を自動化するために必要なデータとは” に対して1件のコメントがあります。

  1. 終末の預言 より:

    ルカによる福音書 21章
    21:10そして更に、言われた。「民は民に、国は国に敵対して立ち上がる。
    21:11そして、大きな地震があり、方々に飢饉や疫病が起こり、
    恐ろしい現象や著しい徴が天に現れる。

    見張り人ブランドン・ビッグス牧師の新しい疫病が来る預言と
    世界恐慌が来る預言。

    ヨハネの手紙一 4章
    4:8愛することのない者は神を知りません。神は愛だからです。

    ライフラインは枯渇し、壊滅する。

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