発注点
発注点
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「革新的生産スケジューリング入門」第3章講義3
在庫管理とは、モノ(マテリアル)の保管と入出庫を中心とした現物のコントロール作業と、モノの保有数量のレベルを監視・維持・調整するマネジメント作業からなっている。このサイトですでに何度か説明したとおり、在庫とは一種の「時間の缶詰め」であり、あとからやるべき行為(購買や製造)を先に前倒しでやって、時間をかせいでおくという意味ももっている。したがって、在庫数量のレベル維持は、すなわち供給リードタイムのマネジメントでもある重要な仕事だ。
さて、在庫レベルの維持は、消費された量を見ながら、適切なタイミングで適切な量の再手配(注文)をかけることによって行なう。この発注タイミングの取り方に応じて、定期発注か不定期発注かに分類できる。また、発注数量にしたがって、定量発注、定数補充発注、不定量発注などに区分することも可能だ。
在庫数量を監視したり数えたりする仕事は、それ自体が簡単ではなく、コストがかかる。また発注手配のタイミングや量を決め、手配伝票を発行するのだって、やはり手間がかかる。むろん近年は、在庫管理にコンピュータを使用することが広まったため、ある程度この労力は軽減された。とはいえ、そうした仕組みを支えるためには、入出庫のたびに端末に入力記録したりバーコードを読んだり、といった手間や機器コストがかかっているわけだから、結局、コストは薄められて全体に広がったといってもいい。
そこで、荷動きの少ない品目や、単価の安い品目などは、なるべく手間のかからぬ簡易な方法で、在庫レベルの維持をはかりたい。このために広く用いられているのが、発注点法式である。
発注点方式では、資材の在庫の推移を見て、それがある一定の決められたレベル(これを「発注点」という)を切ったら、最も経済的な発注量(EOQ)を手配して、つねに在庫量が適正な状態になりようにはかる方式だ。手配量の側面から見ると、定量発注方式に属する。手配のタイミングは不定期となる。
発注点の数量はどのように決めるべきだろうか。原則として、その品目の手配をかけてから供給されるまでの期間(発注リードタイム)に、消費によって在庫ゼロ(欠品)が起きないようにするのがよい。すなわち、次の式のようにする(より正確には安全在庫量を加えるべきだが)。
発注点(個数)=発注リードタイム(日) × 平均消費速度(個数/日)
発注点方式は、単価はあまり高くないが、量や種類の多い資材の発注管理に使われる技法だ。この対象を選び出すにあたっては、よく在庫量のABC分析を行なって、BC品目を選び出す。ただし、使用量(需要)変動があまりにも間歇的でアバレのひどい品目には向かない。したがって、使用実績の時間経過をみるデータがとられていないといけないことになる。
なお、発注点方式では、在庫の棚や箱からモノを取り出して、ある数量まで減ったら、自動的に発注手配用の依頼伝票が中からでてくる、などの工夫をするとよい。こうすると、いちいち在庫数量をモニタリングする手間がいらなくなる。以前紹介した「ダブルビン法」も、この簡易版発注点のひとつだ。逆にいうと、コンピュータで在庫量を定期的に計算・監視して、発注点を切ったら手配をかけるという方法は、ある意味で定期発注方式と大差のないやり方だともいえる。使い分けと意義を、あらためて考えるべき時かもしれない。