BOMにおける不良率と歩留り率の定義

BOMにおける不良率と歩留り率の定義



「あなたの会社では、BOMなどの生産管理のマスタ・ファイルに、不良率や歩留り率をどう登録していますか?」と質問されたら、どう答えるべきだろうか。



だいたい、不良率というのは品質管理の問題だから、これを下げる努力こそが大事で、わざわざその数字をマスターに登録してしまったら、改善に結び付かない--これがふつうの答えかもしれない。



「不良率は品質管理の問題」という捉え方は当たっているが、一面的でもある。最終製品を検査して、不良品を排除し、不良率の統計を取るの品質管理の主な仕事だ。しかし、品質管理課だけで製品の品質を決められるわけではない。製造プロセス全体の中で、いかに品質をつくりこんでいくかが、生産管理全体の大きな課題である。そのためには、製造の各段階、すなわちBOMの階層を下から順に上がっていく製造工程のどこで、具体的に品質を確保できるかを吟味しなければならない。



そもそも、失礼ながら多くの企業では、「不良率」の定義自体あいまいだ。へたをすると、同じ会社の中でも部署が違うと別の定義を使っていたりする。部品・材料の不具合に起因する不良と、工程上のミスで生じた不良を区別して、前者は資材購買課の問題と称して工場不良率から差し引いたり・・。



そこでまず、混乱を避けるため、資材が製造作業(工順)によってBOMの階層を一つあがるときの、歩留り率(yield)を、つぎのように定義してみる。

 

 歩留り率=その工順から実際に産出された親品目の数量 ÷ その工順から産出されるべき設計上の数量

 

 ただし、ここで「産出されるべき設計上の数量」とは、その工順に投入した子部品の数量と、設計上のBOMにおける所要比率から計算する。

 たとえば、親品目Xを1個組み立てるには、子部品A・B・Cが2:2:5の割合で必要だ、と設計上きめられているとしよう。そして、ある日の作業で、A・B・Cを200個・200個・500個用意して、組み立て作業をしたとき、でき上がった親品目のうち、品質検査に合格したものが90個だったら、歩留り率=90÷100=90%になる。



 ところで、用意した子部品Cの500個のうち、実際には450個しか使い物にならなかった(あとの50個は購買時点から不良だった)としたら、どうなるか。今度は、「その工順から産出されるべき設計上の数量」は90個だから、そのときの歩留り率は100%だとわかる。



つまり、歩留り率は、その「工順」の産出効率、すなわち作業品質を計るものなのである。なお、製品にならなかった分の材料は破棄されると考える。もし、それが原材料として再利用(リサイクル)可能ならば、工順の製品として原料を登録すべきだろう。そのときは、BOMにループ(自分自身に親子関係を持つ)ができる訳だが。



つぎに、不良率(shrinkage)を定義する。

 

 不良率=1-(設計上必要とされる子部品の数量/実際に消費した子部品の数量)

 

「設計上必要な数量」とは、BOMに規定されている部品の所要比率×生産すべき親品目の数量で計算される。さきほどの例で行くと、親品目を100個つくる際に、子部品A・B・Cをそれぞれ200個・220個・500個消費してしまったとしよう。部品形状その他のせいで組み付け作業が難しく、Bだけは余計に必要としてしまったと。むろん、用意した部品Bはすべて良品であるという前提だ。このとき、子部品Bの不良率は100%-(200/220)=約9%、という事になる。



つまり、不良率というのは、工順で使用する「部品」それぞれの、無駄になる比率を表している。歩留り率と不良率は、工順のアウトプットとインプットをそれぞれ計るものなのだ。



工場というのは、製造のあらゆる段階で検査をしているわけではない。検査には余計なお金も人もかかるからだ。しかし、不良部品を後工程までずっと流してしまって、最終検査で引っかかったら、それまでの資材と手間がかなり無駄になる。したがって、途中のどこで部品の検査をするのが最も効率がいいのか考えるためにも、BOMには不良率と歩留り率の登録が必要である。



また、生産計画で与えられた最終製品の数量から、原材料の量を部品展開して計算する際にも、不良率および歩留り率を考慮する必要がある。これもBOMに不良率を登録する理由になっているのである。

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