発注点方式の在庫コントロール (2007/02/18)

生産に用いる部品・材料の在庫管理(在庫レベルコントロール)では、最初にABC分析をおこなうのが定石だ。ABC分析は、在庫数量の大小を見るものと、消費量実績値の多寡をみるものと2種類ある。前者は在庫量圧縮目的のスタディに用いるもので、後者は消費量の傾向に応じたコントロール方式の決定に用いる。

A品目(消費量の大きな品目)は定期発注方式、B品目は不定期定量発注、C品目はダブルビン法など簡易手法をもちいる、というのが通常の決め方である。むろん、平均所要量が同じでも、需要傾向が安定しているのか不安定で間歇的なのか、で答えはかわる。また、その品目が高価か安価か、小さいのか場所ふさぎか、手配から納入までのリードタイムが長いか短いか、賞味期限があるかないか、などによっても解はことなる。

一般に、需要が不安定で高価で場所ふさぎで消費期限があって納入リードタイムが長いものほど、在庫をきめ細かく見てやらなければならない。したがってA品目と同様に、定期発注方式がふさわしいことになる。定期発注方式では、一定期間ごとに在庫数量をきちんとカウントして、消費数をおぎなうべく発注手配を行なう。だから手間とコストがかかるわけだ。

これにたいして不定期定量発注では、在庫数量を毎回カウントする手間をはぶき、そのかわりに在庫レベルがある線を切って下回っていないかどうかだけをチェックする。その線を「発注点」とよぶ。発注点を下回ったことに気づいたら、一定数量の発注手配をかけるのである。図1は、在庫理論のテキストなどでよくみかける発注点方式の説明チャートである。

ところで、このチャートは現実には少しそぐわない点があるのにお気づきだろうか? それは、在庫推移がきれいな勾配をもつ線でえがかれていることだ。これは、毎日リアルタイムで在庫数量を把握していてはじめて可能になる。ところが、何度もかいてきたように、在庫数量のカウントは手間とコストのかかる作業である。かりに部品倉庫からの入出庫はコンピュータのバーコード端末でチェックしているとしても、現場在庫まではそうはいかない。したがって、実際の在庫レベルの把握情況は、図2のようになる。

もう少しつけくわえると、上の図はどちらかというと在庫中心の図である。在庫管理者中心の図といってもいい。流通業のように、販売による消費と仕入による供給のみで在庫が決まる世界では、これでもいいだろう。販売(需要)は自分では計画できないため、在庫量だけを見て、発注点で補充手配を行なうしかない。

しかし、今日のほとんどの工場では、なんらかの計画にしたがって生産が行なわれ、部品が消費されていく。消費も手配も計画的である。だから、在庫レベルコントロールも、生産中心の視点で行なう必要がある。私は、図3のような累積需給線図による、需要(生産)と供給(発注納入)の両側をおさえたチャートの方が便利ではないかと考えている(累積需給線図は流動線図と呼ばれることもある)。

だが、ここでは従来の在庫線図で説明をつづけよう。生産計画にはふつう、「タイムフェンス」という概念がある。これは計画を確定させる直近の期間であり、通常は1週間からせいぜい1ヶ月程度である。え? うちは毎日、変更や割込みがはいります? たとえそうであっても、部品手配は今日注文して明日納入されるものばかりではないだろう。だとしたら、ある程度、計画の大筋は変えない期間があるはずだ(そうでなかったら顧客に納期も確約できず、サプライヤー側も準備できないから、生産計画の名に値しない)。

そして、本日からタイムフェンス期間内の生産による部品消費予定は、計画で見えている。これを「引当」と呼ぶ。引当とは、いわば部品在庫に予約がかかった状態だ。

また、その一方で、すでに発注手配をかけてタイムフェンス期間内に納入される予定の数量もあるはずだ。したがって、計画末時点での有効在庫量は、次のようになる:

有効在庫量=現在庫量+既発注分-引当数 (個数単位)

さて、この式から発注点をどのように決めるかという問題がでてくる。ここで、在庫問題をリードタイム日数の切り口からアプローチすると、明快な解がでてくるのだが、長くなってきたので、それについては項を改めてまた書こう。