(2) 愛と青春とお急ぎの旅立ち


アリタリアで東京からミラノに直行する便ができたのは本当にありがたい。以前はイタリアといえば南回りが多かった。僕等は’91年に南回りでトルコに行って、つくづくこりた。二人とも、もう体力と時間の余っている20代ではないのだ。


NEXで成田に行って、小さな代理店のカウンターを探してどたばたして、旅行保険に入って、しかも医療保険はかなり高いやつにして、フィルムを買ったりあれやこれやをしているうちに時間が近づいた。二人で空港利用料のチケットをかって出国審査の方に降りていく。そしてカウンターを通ってゲートの方に足を向けた途端、「まずい! 銀行で現金を下ろしてくるのを忘れた!」と気がつく。


「いったん外に出たら絶対中にはもどれません」という係官の人を二人がかりで必死に泣き落として、ようやくすこしの間、国内側にもどしてもらう。銀行に駆け込んで現金を手元にして、ようやくほっとする。


飛行機に乗り込んで、結構こんでいるのにもおどろきながら、ふと家内が言いだす。

「今気がついたけど、あたし今朝から一度も咳が出てない!」

やれやれ、先週までのあの騒ぎは何だったんだ。さっき保険屋さんで「ぜったい向こうで病院に行くと思うから」といって高いお金出したのは誰なのよ(^_^;)。まあいっか。


杞憂なら、杞憂だったでいいさ。心配事はローマ行きの飛行機の中では、似合わない。




つづく