仕事を変革する<計画とマネジメント>の技術ノート

イタリアは遠くにありて思ふもの

(1) イタリアは遠くにありて思ふもの

世の中の心配事がみな、終わってみれば杞憂で済んだ、となればこれほどめでたい話はない。世の中の悩み事は、全ていつか美しく収まりがつく、そんな気分にたまにはひたってみたい。
病人を連れて遠い旅行に行くとなれば、なおさらだ。

今度イタリアに行くときは南に行こう、と決めたのはいつのことだったろう。’86年に夫婦二人でスペインとイタリアを2週間かけて回ったとき、最後にローマまで南下して、そこで終わったからだったかしら。日本に帰ってきてからしばらくの間は、夜毎ローマの夢を見た。行く前はさんざん馬鹿にしていた家内のイタリア病に、自分もものの見事にかかってしまったのだ。

そのあと家内が都立大の夜学に通っていたとき、たまたま史学科でイタリアの留学生と知り合いになった。彼女はナポリ出身で、白い花のように若くてかわいらしく、そして気さくで趣味の良い学生だった。帰国の時に「結婚式を挙げるときには絶対僕等も行くからイタリアに呼んでね。」と約束したものだ。もちろん、その時はナポリを起点にして、さらにシチリアにも回ろうと思っていた。

なぜシチリアか。ミシュランの「イタリア」ではシチリアは三つ星の宝庫なのだ。本土の有名な都市だって、ボローニャもシエナも二つ星であること見れば、その充実ぶりがわかる。
共働きだった僕等のときおりの夕食後の楽しみは、ミシュランの「イタリア」を取り出してきて、あそこがきれいだね、ここに行ってみたいねと、たわいもなく空想することだったのである。

その僕等が、子供を持つ親になった。そう簡単に旅に出られぬ身分になったわけだ。それだけでなく、実は家内が病気がちになったことがこたえた。産後の肥立ち、というのか、体調がうまく戻らずに喘息に悩まされることになった。

ところが世の中の皮肉というか喜劇というか、会社が3週間の長期休暇を恵んでくれることになった。会社に10年間奉公した、その「リフレッシュ」休暇というわけだ。でも、赤ん坊と、吸入器を手放せない妻をかかえてどうすることができるだろう。

と、ここで救いの神が現れてくれた。義理の母が、「赤ん坊を見てあげるから二人で旅行に行ってきなさい」といってくれたのだ。子供を親に預けて自分たちだけで海外旅行、とはなんとふとどきな考えであるか! いや、それよりも家内にそれだけの体力があるだろうか。

秋に旅行会社に予約を申し込みながら、延期すること2回。とうとう休暇のタイムリミットの2月が来た。出発前の週になっても家内は喘息で寝たり起きたりの生活だった。しかし、旅行直前には小康を得て、希望を胸の内に持ちながら、出発することにしたのである。

つづく

ワークスペース・白幡

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