仕事を変革する<計画とマネジメント>の技術ノート

シャルトルを散歩 Chartres

(6) シャルトルを散歩 Chartres

フランス地方都市 点描(6)

シャルトルのカテドラル

シャルトルという街の名前は、ゴシックの大聖堂とわかちがたく結びついている。パリから列車で1時間程度の距離にあるこの街は、周囲360°を平坦な緑野で囲まれている、典型的な農業地域の地方都市だ。それも、かなり小さな街である。駅に降り立ってみると、すぐそのことは実感する。

聖堂の2本の塔

駅から少し歩くと、大聖堂の二つの塔が見えてくる。左右で高さも形も違う、二つの塔が、このゴシック教会の傑作のファサードを形づくっている。およそ、フランス文化の美意識といえば幾何学的な対称性と、優美な無重力性と、相場が決まっている。ところが、この聖堂のファサードに限っては、その対称性が破られているのだ。

むろん、これには歴史的な理由がある。もともとゴシック時代の大聖堂建築は北フランス、ドイツ、スペイン、イングランドなどで流行ったが、どれもたいへん長い時間をかけて建設された。百年以上かかるのは当たり前で、2百年もざらである。一人の建築家の生涯の間に完成できるような、ちゃちな代物ではない訳だ。

そして、当然の事ながら、このようなビッグ・プロジェクトには相当の予算がいる。それぞれの都市が、メンツと威信をかけて建設する。百年以上の歴史の間には、町自体の経済が成長したり衰退したりするのだから、途中で計画が中断したり再開したり、拡張したり縮小したりは当たり前に起こる。

現在のシャルトルの街を見て、最盛期のころの都市の勢力を想像するのはけっこうむずかしい。こんな小さな町が、よくぞこんなに大きな教会を建てられたものだ、というのが普通人の正直な感想だろう。

カテドラルの中に入ってみる。門扉の列柱の彫刻の素晴らしさは言うまでもない。いかにも北フランスのゴシック美術的な表情に満ちている。

しかし、シャルトルをシャルトルたらしめているのは、何よりもそのステンド・グラスだ。とくに、正面の円形の「薔薇窓」は奇跡のような美しさを作りだしている。その紫と青と赤と白の、さまざまな色の調和。そして円の中に12角形を組み込んだ幾何学的装飾性。ここでは理性と感覚がみごとなバランスをとって、さながら完璧な音楽のように見るものの心を満たしてくれる。

ゴシック教会はそれなりにいくつか訪問したし、ステンドグラスも良いものをいろいろと見せてもらったつもりだ。たとえばノートル・ダム・ド・パリ教会の北側の薔薇窓なども傑作だし、サント・シャペルの窓、ランスの大聖堂の薔薇窓も素晴らしい。近代以降の教会建築の中にも、美しいステンドグラスは数多い。

しかし、これまで見た中で、シャルトルの大聖堂は最上の傑作であり、白眉である。およそ、ステンドグラスに関心を持つ人は、できればこの薔薇窓を自分の目で見てほしい。そして、その光に満たされた幸せを感じられたら、素晴らしいだろう。

奥の内陣のステンドグラスもまた、とても素敵だ。

ところで、シャルトルの街は小さいといったが、大聖堂以外に何も見るべきものがないと思ったら、大間違いだ。カテドラル以外にも古くて美しい教会がいくつかあるし、何よりも町自体が穏和で、とても心地よい風情を持っている。

シャルトルの街は、川のほとりにあって、かつてはそれなりの水運と農業経済によって栄えた場所だ。聖堂から、川に向かって、なだらかな坂道が続いている。そして、斜面にはのどかな草地があって、人々が思い思いに散策したり、日向ぼっこをしている。シャルトルは、歩くととても気持ちのよい場所なのだ。

街のインフォメーションで配っている地図には、散歩道が点線で書かれている。これにしたがって、ほぼ1時間ほどの散歩をしてこそ、この街に来た値があるというものだ。道沿いには、古いが洒落た家々も並んでいて、心地よい。

街の中心にある公営市場にほど近いカフェに座って、少し遅めの昼食をとった。サラダ・ニソワーズと、冷たい白ワイン。そして、降り注ぐ5月の陽光。

シャルトルに来たら、ぜひ散歩をしてほしい。これほど気持ちのよい散歩道は、滅多にないのだから。

ワークスペース・白幡

お気軽にお問い合わせください

PAGETOP
Copyright © マネジメントのテクノロジーを考える All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.