仕事を変革する<計画とマネジメント>の技術ノート

気まぐれ批評集 書評 (2001年以前)

気まぐれ批評集 書評 (2001年以前)

Books

気まぐれ書評・年度別ベスト 気まぐれ書評(2005年以降) 気まぐれ書評(2002~2004年) 音楽 映画 演劇 コミック   


[目次]


2001年



  ★ これも男の生きる道 橋本治
01/12/23

橋本治流の、一種の人生論の本。テーマは「男の自立」というコトバだが、実際の主張は「自立は単なる出発点であり目的ではない、大事なことは自分の頭で考えて行動する一人前の人間になることだ」という、まあ要約すればひどくありふれた、陳腐にさえ聞こえる思想である。

彼のこの種の本はいつも論理の飛躍がかなりひどい(結論が間違ってるというのではないのだが筋道がたどりにくいのだ)。しかし、この本はややていねいに一歩一歩進めながら書いているので、筋を見失うことはない。ま、そのぶん、あの天衣無縫な持ち味が薄いとも言えるが。

しかし、同じ人生論の本ならば、やはり「絵本・徒然草」などの方がはるかに充実していて良い出来かもしれない。かれは何といっても、古典文学の「鑑賞」がもっとも得意で面白いのだ。長いメロディーの創意には乏しいが、他人のメロディーを借りて複雑絢爛な織物を創り出す編曲家の才能に通じるところがあるのかもしれない。



    ブラームスはお好き フランソワーズ・サガン
01/12/20

有名な小説だが、途中までは読んでいてもあまり共感や面白みを感じずにいて、“自分はレンアイ小説というのはやっぱり向かないんじゃないか”などと考えていた。さすがに結末は(ちょっと性急なしめくくり方ではあるけれど)劇的な感情があって、それなりに味がある。

それにしても、近代小説としては奇妙な叙述技法ではないだろうか。この小説では、三人称の形式をとっているにもかかわらず、話者は自由自在に登場人物たちの心の動きの細かな襞を説明したり過去の追憶などを描写で呼び戻したりする。ふつう小説といえば、心理描写をする場合でもだれか特定の人物を決めて、かれや彼女の主観から見た世界を描写するものだろうに。サガンの場合、段落ごとに、いや、はなはだしいときにはセンテンスごとに対話し会う人物たちの主観の間をいったり来たりするので、ほとんど読んでいて混乱するほどである。

その心理の細かな説明が、いかにもこの作家の特徴であり、かつフランス文学の伝統に根ざす特色でもあるのだろう。“叫ぼうかと思ったが、かわりに眼を見つめ合って吹き出すことにした”といった具合に、自分の感情の細かな移り変わりや、相手の気持ちの読み合い、意味のさぐり合いといったところに、感情という財産を自由自在にあやつることを理想とするフランス的価値観をみる気がする。

なお、パリで読んだからといって、よりいっそう興趣の高まる物語である、というわけではありません。少なくともぼく個人にとっては、ですが。



★★★ ドラマの中の人間 竹内敏晴
01/12/14
同じ話題の繰り返しが多い最近の彼の本の中では、出色の面白さだ。さすがに演出家を本業としているだけのことはある、と感心する。

「夕鶴」にはじまり、ソフォクレスの「アンティゴネー」から、ブレヒトの「セチュアンの善人」まで、ドラマの中に登場する女性を中心に、ていねいに芝居の台本としての戯曲を読み解いていく。筋書きだけを追うことなく、かつ有名なセリフのさわりの引用集におちいることもなく、ドラマを作り演出するプロの目から、その芝居のいのちの中心に迫っていく態度はさすがである。翻訳劇を多く取りあげながら、優れた翻訳のもつ日本語の美しさや力強さも鑑賞している。

また、この本を通して読むことで、西洋の演劇のたどった古代・古典・近代・現代の変遷と発展、そして日本人にとっての距離感も理解することができる。演劇に興味のある人すべてに薦めたい本である。



  ★ この金で何が買えたか 村上龍
01/12/02
日本がバブル崩壊の後始末で金融機関や不動産業・建設業などの「救済」につぎこんだ巨額の費用を、そのお金を別に使えたとしたら何ができたかによって批評する本。本の意図は非常に正常かつまっとうで、いかにも逆説的モラリストの村上龍らしい。ところどころ、これだけの巨額の金を私物化して使えたら、それを女をナンパするために使おう、という意図が出てくるところもいかにも村上龍だ。この本を見ていると、彼の関心や欲望がどういうところに偏在しているかがよく分かっておかしい。しかし、こういう批評精神に満ちた本が、ジャーナリズムや経済学者ではなく小説家によって出版されるところに日本の本当の不幸がある。

この本の中に示される「使い道」でいちばん感心したのは、世界中の地雷を除去するための費用3兆9600億円だ。たしかに巨額だが、「たった」4兆円ですべての地雷をこの惑星から取り去ることができれば安いものかもしれない。富士銀行1行への公的資金投入と整備新幹線事業費をたせばお釣りが来るのだ。単なる見栄や世間体のために無用な軍艦をインド洋に送るよりも、日本が世の中のために貢献できる方向はいくらでもあるはずなのだ、馬鹿でなければ。



 ★★ 「ただの人」の人生 関川夏央
01/10/15

関川夏央の本は面白い。小説ともエッセイともつかない微妙なその境目で、彼は不思議な名人芸を披露する。その手腕は、とくに異国や過去の時代の遠い人を題材にするとき、もっとも冴えてくる。

この本の中でも出色なのは、鮮宇輝という韓国人の生き方を語った表題作「『ただの人』の人生」だろう。鮮宇という人物の持つ、純朴ながら剛毅、平凡ながら数奇、そして謙虚ながら高貴なる魂のたどった軌跡を描き、そして海峡をはさむ日韓両国の困難な関係とかすかな希望とを淡々と述べたこの文章は、ひとつの典型として端正な美しさを感じさせる。

これだけの文学的なレベルの高さをたたえた作品群が、読み捨ての文庫の「雑文集」の形で流通しているこの国のかたちは、はたして高いのだろうか低いのだろうか?



★★★ 日本の風土性 オギュスタン・ベルク
2001/09/30
NHK人間大学 1995年10-12月期テキスト

頭の良い人の著作を読むのは、なんと気持ちの良いことなのだろうか。久々にそう感じられる本である。TVの人間大学と題された連続講義のための、非常に薄いテキスト・ブックだが、内容の密度と充実は素晴らしい。

著者はフランスきっての日本(および中国)を専門とする東洋学者。本来は地理学者で日本にも通算で10年近く住んだことがある。この本では「風土性」と言う概念を用いて、人間と空間との相互のかかわりを現象学的に分析する。地理学と哲学の中間的領域である。

本書の冒頭を読むまでは、和辻哲郎の「風土」を、粗雑な環境決定論の本と思って敬遠してきた。しかしこれはまったくの間違いなのだ。和辻の提出した問題意識は(それはこの本の著者の問題意識でもあるが)、人間とは独立した客観的存在としての「環境」論ではなく、人間の主観と環境とを串ざしにした(ベルクは「通態的」とよぶ)概念なのである。それはフッサールの「存在と時間」に対する彼の批判的回答でもあり、人間存在が空間を媒介にいかに形成されるか(同時にいかに空間を形成して行くか)のプロセスである。

著者ベルクはこれを説明するために、北海道と言う絶妙の事例を取る。近代北海道における水田稲作農業がいかに生まれ、育ってきたか、それを通して、欧米人達が「酪農畜産に最適」と考えた北海道の自然地理的景観を、日本人がいかに変えてきたかを示す。

風土性と言う言葉自体、フランス語には存在しない。ベルクは風土性の概念を補足するために、仏語でsens、日本語で「おもむき」ということばを用いて苦心している。

またベルクは、近代都市建築が内包している幾何学的空間が、デカルト的座標空間に起源を持っており、それがデカルト的二元論を体現して、空間の風土性(おもむき)そのものを破壊する方向に作用していることを示している。

ところで、和辻の哲学書「風土」は、その意図にもかかわらず、単なる環境決定論として、さらに(もっと悪いことに)一種の日本論として読み継がれてきた。これは普遍の問題を論じているのに自分の噂話としか取らない、日本文化のオールド・ミス的な悪い点のあらわれである。

が、その同じ傾向が、この小さなテキストのレイアウトや編集を行った人達の間にも見られるような気がする。まるでフランスと日本の比較文化論、それもフランスの光に照らして日本を批判するかのような体裁が随所に見られる。

たとえば、「看板が景観の美しさを破壊する」というキャプションで、日本の水田地帯の実に醜い写真が添えられているが、本文ではこれはフランスでの話なのだ。また、「東京の地名は農村みたいだ」とかかれた写真には麻布狸穴町の文字が見えるが、本文を読むとベルクはこれを肯定的に捉えていて、「あたかも象徴的次元では田園の散歩のようだ」と書いているのである。

同じように、パリのセーヌ川岸の風景と、墨田川の醜く危険な剃刀堤防の写真が並べられている。しかし著者の言いたいことはセーヌが美しく墨田川が醜い、などということではなく、両国の都市景観に対する観念(「風土」)の違いそのものなのだ。フランスでは川は都市建築に組み込まれているのに対し、日本では田園的自然の象徴として(つまり都市活動とは切り離されて)位置付けられている。

こうした点を注意深くより分けて読むならば、この本は短いにもかかわらず、第一級の学究の書であるといえるだろう。



★★★ はてしない物語(上・下) ミヒャエル・エンデ
2001/09/20
エンデの「はてしない物語」は、すごく良かった。今年読んだ中で最良の本かもしれない。

はてしない物語を読みたいと思ったことはあるだろうか? いつまでも終わらないような、長い物語を。
実は私にはない。私は、話は結末の一点に向かって集中して行くようなものが好きだ。必然的に長編よりも短編に、さらりとした風景的断章よりも構造化されたストーリーをを好む。
しかし、長い物語を好む人も沢山いる。読書好きといわれる人はその方が多いかもしれない。数多くの人物とエピソードが交錯する、神話的物語。

この本はそうした長い物語に熱中する少年が主人公だ。おそらくエンデも同じ好みなのだろう。その少年がよむ物語が前半、書物の中からの呼びかけに答えて、物語に飛び込んで自ら体験する世界(ファンタージエンと呼ばれる)が後半である。

しかしそれはいかにも奇妙な冒険だ。ふつう、冒険物語は初めに使命があり、困難があって、達成される結末をもつ。前半は確かにそうなっている。しかし後半は、じつは「汝の欲することをなせ」というテーマしか与えられない。これにそって、自分を失いながら最後に全体的自己をとりもどす、という物語は、ほとんど分析心理学の記録を読むようだ。エンデが次々に繰り広げる神話的道具だては非常に多彩だが、後半はとくにシンボル性を読み取りやすい。

最後に、氷に閉ざされた男の像が出て来るところで、はじめて物語は円環をなし、冒頭に提出されたまま忘れさられていたテーマに帰って来る。それは父と子の愛情の物語だ。この部分をパリの地下鉄の中で読みながら、涙ぐんでしまった。本を読みながら涙ぐむなんて、どれほど私にとって久しぶりのことだっただろうか。



 ★★ 村上朝日堂はいかにして鍛えられたか 村上春樹・安西水丸
2001/09/12
ずっと読書記録をつけていると、5月からこの方、いかに本を読んでいないかが分かる。電車の通勤時間が無いこと、読むより書く方にしばらく熱中していたためだろう。
この本は面白い。しかし、村上朝日堂シリーズも若い時の方がずっと無意味な軽さとジョークに満ちていたなあ。今回のシリーズはやや堅めのエッセイないし主張が多くなっている。でも、巻末にその後のフォローアップがついていたりするところが、いかにも村上春樹流の気まじめな読者サービスをあらわしていて面白い。
ところで、この本のタイトルがロシアのプロレタリア文学「鋼鉄はいかに鍛えられたか」(作者の名前はうろおぼえだがツィオルコフスキーかな)のもじりだ、ということにははたして何人の読者が気がついているのだろう?



 ★★ 帰郷 シチーリアへ  ダーチャ・マライーニ
2001/5/10
原題『バゲーリア』は、著者の母方の故郷で、少女時代の3年間をすごした土地の名前だ。シチリアの別荘地だが、そこの古い屋敷に、貴族に連なる母方の最後の末裔である伯母が歳老いて一人で住んでいる。
マライーニの代表作『シチーリアの雅歌』の主人公も、この屋敷に飾られている一族の肖像画の女性をモデルにして書かれた。そのように縁のある場所なのだが、ミラノでモラヴィアのパートナーとして永く暮らした彼女にとっては、いわば記憶の中で鍵をかけて閉じ込めておいた場所だったらしい。
その記憶の鍵をゆっくりと解いて行くこの小説には、筋らしい筋はない。しかし、この文体の豊穣さはどうだろう! あらゆる細部が香りたち、光と陰影と色彩にいろどられている。これをイタリア的な、あるいはバロック的な文体というのだろうか。けっしてバロックの芝居じみた仕掛けのようなものはねらっていないのに、とても不思議なものだ。



 ★★ ジミ・ヘンドリックスの伝説 クリス・ウェルチ 菅野彰子訳
2001/4/18
ジミヘンの音楽の良さに自分が気づいたのはほんのここ数年のことだ。つまり、中年になってしまってから、彼が死んでしまってから20年以上も経ってからのことだ。
なぜそれまで良さが分からなかったのだろう。自分でも不思議だ。しかしジミヘンを見なおすようになったきっかけは、ライブ・コンサートのビデオを観たことだった。それまで、レコードでちょっと聴くことはあっても、なんだかひどくうるさいものにしか聞こえなかった。
そういうわけで、ジミヘンについて何も知らなかったぼくは、この本を読んでずいぶんいろんなことを学んだ。黒人音楽のコミュニティとは最小限しか関わりがなかったこと、イギリスに行ってはじめて売れ出したこと、’68-69年は低調期だったこと、復活を告げるアルバム『クライ・オブ・ラブ』を出す直前に急死したこと・・
その死は自殺というよりは事故だったろう、と著者は書いている。この本は死後わずか1年後に書かれたものだ。しかし、30年たった現在に考えてみると、ジミヘンの死はやはり来るべくしてきたもの、彼が背負わされた重荷の結末としてやってきたものだという感が強い。
本はイギリスの音楽ジャーナリズムの水準を示していて、良くかけており、短いが面白い。それと、訳者のあとがきはとても良い。この部分だけでも、本屋で立ち読みする価値があるだろう。



 ★★ エホバの顔を避けて 丸谷才一
2001/4/10
とても小説的な、すぐれた作品である。とくに出だしがいい。

田舎町アルバの靴職人ヨナの前に見知らぬ旅人が現れる。かれは都市ニネベへの道を聞くが、彼の服は奇妙なことに上から下まで縫い目が一つもない。礼の金を受け取ったヨナは、上等な酒場に行くが叩き出され、古着屋に入り汚れた仕事着の替わりを探す。すると主人が出してきたのは、たった今旅人から買ったという縫い目のない衣だった。その衣をまとい、泥酔して道に眠るヨナに、真っ暗闇の中で声が幻聴のように聞こえてくる。「立ってかの大いなる街ニネベへ行き、よばわりてこれを責めよ。40日にしてニネベは亡ぶと・・」

丸谷才一は旧約の短い予言書「ヨナ書」を題材にして、重厚かつ清冽な物語を組み立てる。神話的素材、因果論的意味づけへの反逆、そして「意識の流れ」の手法など、ここには現代小説を作り上げる要件が教科書的にそろっている。しかし、丁寧で知的な文体と、よく考えられたストーリー・テリングの才のおかげで、小説が意気込みに押しつぶされずに済んでいる。とくに策謀の渦巻くニネベの街に予言の日が近づいてくるサスペンスはなかなかいい。著者34歳の時の傑作である。



 ★★ 電脳社会の日本語 加藤弘一
2001/3/15
この本は非常に面白い。コンピュータの文字コードを中心とした話だが、IT全般に興味のある人すべてにおすすめできる。単なる技術論としてだけでなく、文字と情報技術をめぐる経緯やさまざまな事件を、きちんとした調査取材を元に、とても面白い読み物としてまとめている。
著者の加藤弘一氏は文芸批評家だが、そのアプローチは決して主観的なものではなく、多面的かつ理性的な態度で、この複雑で錯綜した問題に迫っている。すぐれたジャーナリズムの仕事として評価すべき本だろう。
それにしても文字の問題は奥が深い。とくにそれが多言語の共存を前提とした場合には、各言語(語族)がその奥に無意識のうちに持っているパラダイムの違いが露出してくる。ことにコンピュータ技術は不幸にも、英語というきわめて単純で極端な言語文化の世界から生まれてきたため、多の言語の使用者はその透明な壁に激突するケースがあまりにも多い。この問題がきちんとした形で提起された意義は本当に大きいと信じる。



  ★ カラダに聞いた15の話 永井明
2001/02/06
医療ジャーナリスト・永井明の書いたユーモア医学短編小説集。
この人の本はなるべく買って読むようにしている。元医師である彼の正確な医学知識に信頼を置く、という面ももちろんある。しかしそれよりも、医療という複雑な対象を、割り切れぬ部分は割り切れぬまま受け止め、考えようとする謙虚な姿勢が好ましいからだ。また妙に深刻ぶったり正義感で切り捨てようとしない点もすきだ。
その彼の、臓器移植をテーマとした、しかしユーモアとファルスにみちた短編集。病気を主題にしながら、しかし暗くない話を作りたいという考えは、前に出た「ぼくが病気になった理由」からあった。
15編の小説はどれも短いので、アイデアが勝負になる。なかでは「ランチタイムの恋人」がぼくは一番気に入った。



 ★★ 子どもの本を読む 河合隼雄
2001/1/27
河合隼雄が物語を読み解くときの、その心理世界の核心に急角度でつっこんでいくスピード感とねらいの確かさは大したものだと思う。その技量は、とくに昔話や子供向けの物語のように、物語が本来持っている(いた)性質をまだ豊富に保っているようなジャンルでより発揮される。
とりあげられている本はどれも興味深いが、なかでもピアス「まぼろしの犬」・今江祥智「ぼんぼん」三部作・ゴッデン「ねずみ女房」・長新太「つみつみニャー」はとても面白そうだ。あまりなじみのない、しかし豊穣なジャンルへの水先案内として興味深い本である。



  ★ 飛ぶ教室 E・ケストナー 山口四郎・訳
2001/1/19
有名な少年小説で、期待して読んだ。たしかに悪くない。前書きも、結末も、この作家の真情と信条にあふれていてとても素敵だ。
しかし、何だこの翻訳は! とてもまともな現代語ではない、いや、日本語にすらなっていない。
「それより彼は、手紙をひらくときは、舞台げいこがすんでから、寄宿舎の庭を歩くか、人気のないピアノ室にいって、一人になりたいと思いました。」
これが東大名誉教授で独文学者の書く文章だろうか。少年達の会話もひどいし、そもそもかなと漢字の使い分けもひどく鈍感だ。
本来はとても面白い小説のはずなのだが、この翻訳のせいで、かなり持ち味がそこなわれてしまった。読むにしても、この講談社青い鳥文庫版は決して選んではいけない。



    からだのひみつ 田口ランディ・寺門琢己
2001/1/10
この本には不満だ。面白い対談で、テーマも今日的、装丁もきれいなのに、なぜか読み終えてかすかに不快な印象が残る。
その理由を考えたのだが、どうもこの人達は「からだ」について知っていることに自信を持ちすぎているからではないかと思い当たった。そんなにからだというものは自明なものなのだろうか。そんなに自分たちの身体感覚というものは飛び抜けているのだろうか。
寺門氏は整体の仕事をしていて、ときどきひどく思いがけない出来事にぶつかっているはずだ。生き物相手の仕事をしている人はたいてい、生き物という対象の、理解しがたい不思議な例外的事象に何度もぶつかって、謙虚さを身につけていく。それなのに、この二人はなぜか「からだ」というもののポジティブなメッセージ性を信頼しすぎているような気がする。
細かいことだが、寺門氏が漢方の説明に臓器の名前を使うのも気になった。「いいセックスを体験するには、元気な腎臓が必要です」などという。しかし、漢方の腎・肝・心といった「臓」は機能の名称であって、必ずしも特定の解剖学的な臓器をさしているわけではない。たとえば脾と脾臓はぜんぜんイコールではない。承知の上であえてわかりやすさのためにそう呼んでいるのかもしれないが、誤解を招きやすいと思うのだ。
最後に、田口さんが「おじさん達には前立腺肥大でとっとと・・召されていただくと」と書いているのは、40歳すぎた男性としてははっきりとひどく不快だった。今はかっこいい寺門君だっていつかはおじさんになる。この本はさっさと処分することにしよう。人を呪わば穴二つ、ということを忘れてはいけない。



★★★ 神の子どもたちはみな踊る 村上春樹
2001/01/05
 このすぐれた連作小説は、前作「スプートニクの恋人」に比べるとはっきりと進歩ないし変化のあとが見て取れる。文体からは過剰だった形容詞や比喩の贅肉が落ちて、すっきり読みやすくなっている。叙述はすべて三人称だ。

 最初の「UFOが釧路に降りる」を読んだ時点では、例によって大事な女性(配偶者)が謎の理由で失踪を遂げ、そのかわりに奇妙な女性二人組と遭遇するという、いつものパターンが展開されていて「またかよ」と思わずにはいられなかった。しかし、妻とはあっさり正式に離婚してしまうし、新しい女性とは「結合できない」ので、これまでの小説とは明瞭に異なり、失われた自分の半身を探す物語とは切れていることがわかる。かわりに提示されるのは、TVニュースで映し出された地震後の惨状のような、日常の奥底に内包された亀裂の断面である。

 それにつづく別々の5つの物語はそれぞれ独自の不思議な後味を残す。どの話の中でも地震は遠くに起きた・しかし自分にかすかに関係するはずの破壊や危機の象徴である。暗示的なシンボルが説明抜きで投げ出され、物語がまさに始まりそうな予感を見せるところで唐突に終了してしまうという点では、村上春樹の短編はまるで日本の昔話のようでもある。

 また、最後の「蜂蜜パイ」では珍しく作者の分身を思わせる小説家が登場する(西宮出身で早稲田大学出身という固有名詞が語られる)。プロットはある意味で陳腐な三角関係で、なおかつ結末も、この作者にしては例外的なほど妙に甘い。しかし、小説の中に別の童話のストーリー生成が劇中劇のごとくからんで、対位法的な効果を生むテクニックなどは非常にうまい。

 この作者にとって、「ねじまき鳥クロニクル」はある意味で、それまで膨張しつづけた『物語』の到達点だったと思われる。その後、「アンダーグラウンド」や「約束された場所」などのジャーナリスティックな仕事を通して、社会との“コミットメント”の位置づけと小説への結び付けを模索していたにちがいない。

 個人的には、「アイロンのある風景」「タイランド」「かえるくん、東京を救う」が気に入った。短編小説として、いずれも文章・ストーリーともに見事な出来映えである上に、通して読んだときの明暗・緩急の交替が、良い音楽のリズムのような快感を与えてくれる点が素晴らしい。傑作だと思う。



2000年



★★★ 古い日本人よ さようなら  西村肇
00/12/26
本の森・刊(1999) \1,700

 この本は面白い。月刊誌に連載したエッセーの集成のため、話題がやや広がりすぎる印象もあるが、規格外な元東大教授であるこの著者が常日頃から持っている問題意識のあり方がよく分かる。
 得意の話題であるバイオテクノロジーの話題や科学研究のあり方にかんする議論ももちろん面白いが、読んだ中でもっとも衝撃を受けたのは、「科学者になれ、とすすめることができるか」から「文部大臣になった同僚・有馬朗人への手紙」までの3編だった。ここでは、いわゆる『理系離れ』の問題を扱っている。今や、製造業の歯車として科学技術者を必要とする産業界が、理工系学生の減少を憂い、子供たちを理科好きにしよう、といったキャンペーンを教育界を巻き込んですすめている。
 しかし工学部で長らく教授をしてきた著者は、自らの同僚や後輩・弟子たちの生き方や処遇をみて、それがいかにナンセンスで欺瞞的かを指摘する。「現在の企業では40歳を過ぎた技術者はいらない」「技術者の定年後の生活はきびしい」「会社の中で生き抜くには技術者ではなく、会社人間にならなければならないと、みんなが骨身にしみて知っている」ということを具体的なエピソードをあげて示していく部分はきびしい迫力に満ちている。
 日本人の英語に関する3編もなかなか示唆に富んでいる。とくに英語的な「ロジカル」であることと日本語のなかで「論理的」であることの違いを説明した最後の「新文章読本」は役に立つ。
 この本には、この著者には珍しく個人的な過去の出来事や追想がところどころに書かれている。とくに少年時代の満州の話は印象が深い。「下り坂」の時代を生きている日本人に対し、「個人として生きるにはどうすべきか」を考え提案する著者の思想には、こうした自らの困難な経験が点景のようにちりばめられ、奥行きをつくっているのだと思う。



 ★★ 神々の崩壊 田中宇
00/12/16
MSNジャーナルでメールマガジンの形で配布された「田中宇の国際ニュース解説」から選んだものを集めている。このクオリティの高さには舌を巻く。
とはいえ、99年当初に編集された本書は、それからほぼ2年近くたった今では内容的にすでに古びかけている部分もある(とくに中国やマレーシアなどアジアの情勢にその感が強い)。ここがニュースものの難しいところだろうか。せっかくインターネットという新しいメディアをベースにしているのだから、発行後のフォローなどもメディアでリンクしているととてもいいのに、と感じた。


 ★★ ソウルの練習問題 関川夏央
00/11/26
再読。ソウルへの旅から帰ってきて、押入の奥から探し出してきて読み直してみた。
内容的には84年の刊行ですこしもう感覚的に古くなってしまった部分があるが(つまりそれだけ韓国がポピュラーに、ふつうの隣国になっているということだ)、スタイルのみずみずしさ、内容の良さは全く古びていない。対象への愛情、軽いウィット(これは対象への主観的のめりこみを防いでくれる最上の薬だ)、正確な知識、どれをとっても第一級品の異文化案内だと思う。



  ★ 韓のくに紀行(街道をゆく 2) 司馬遼太郎
00/11/06
1971年のもので、まあいささか古いかもしれないと危惧しつつ読むが、それほどとも感じなかった。内容的にはいささか朝鮮古代への指向に偏っていて現代のありさまが感じられにくいが、面白いことはたしか。


 ★★ 日本 権力構造の謎(上) K・ウォルフレン
00/10/31
これはかなり衝撃的で面白い本だった。日本の権力構造を、ベクトルはほぼ同じ向きながら互いに牽制し合ういくつかのグループからなる「システム」としてとらえ、そのありさまを分析する。日本人でありながら知らなかったことが多いのに今さらながら驚く。下巻が楽しみである。



  ★ 働きざかりの心理学 河合隼雄
00/10/31
今年はけっこう河合隼雄の本を読んでいるような気がする・・が、対談をのぞけばまだ2冊目か。
雑誌連載の短い記事の集成のためこってりした読み応えはないが、それなりに面白い。これが書かれてからもう15年以上が立つが、中年の危機に関する研究はふえてきている。この本の中では、日本人は「場」の論理にしたがって動かされている、という見方と、日本人は「永遠の少年」という原型を感じさせる、という意見が印象に残った。


  ★ 橋本治の明星的大青春
00/10/29
橋本治のグラビア写真付き青春論。ま、文章の方は面白い。写真は・・とばしてみるのがふつうかな。



  ★ 深夜特急3 沢木耕太郎
00/10/05
この人は章の題名の付け方が本当にうまい。インド・ネパール編もなかなかだ。それにしてもこの章でさすがにタフな旅行者も病気にかかって倒れる。ブッダガヤの学校のエピソードが一番美しい。


  ★ 心にある癒す力治る力 河合隼雄
00/09/23
心理療法の現場から(2)。
心理療法にたずさわる人々との対談集。臨床の現場で苦労している人たち相手だけに、他の対談よりもずっと面白い。生々しいケースの話もあり、そこがかえって読むだけでも心の治る力を信じさせてくれる。


 ★★ 運命のままに-わが愛しのマストロヤンニ エンツォ・ピアージ
00/09/03



 ★★ 馬車に乗って 沢木耕太郎
00/09/02
この人の本はどれを読んでも面白い。対象への切り込み方がいいのだと思う。


  ★ 新宿鮫 大沢在昌
00/07/25
面白い警察小説だと思う。設定も適度にけれんがきいていて良い。しかし少しばかり都合の良い偶然が多いんじゃないでしょうか。まあ娯楽としては良い出来だけれどね。


  ★ ふたりの平成 橋本治・中野翠
00/06/22
対談だが8割方は橋本治がしゃべっている。まあまあ、退屈はしない本かな。


  ★ 聖なる自然治癒力 上野圭一
00/06/17
うーむ、なんだか気恥ずかしいタイトルだなあ。東洋医学には優れた智慧があると思っているけれど、ぼくはこの著者ほど単純に霊体離脱や見えない「気のからだ」を信じているわけではない。しかし、この本のメッセージが227頁にあるように、
・死は終わりではない
・自分は、より大きな存在の一部である
という認識にあるのだとしたら、たしかに重要な認識だと思う。


  ★ スプートニクの恋人 村上春樹
00/06/17
奇妙な小説だ。この人の話は道具立てがいつも同じだなあ。多作でワンパターンというのが才能の証明なのかもしれないが。
結末、特に最後の2頁が短すぎてなんだか消化不良の感じ。文体はこなれていて嫌いではないが、例によって比喩や形容が多すぎるのが気になる。ときには気がきいていて面白いのだがうるさいときも多い。登場人物がみな似たような文体でしゃべるのもどうかと思う。


  ★ 落着かぬ赤毛 E・S・ガードナー
00/06/10
ガードナーは本当にうまいなあ。ところどころ、よく考えてみると無理な点もあるのだけれど、読んでいる間は気にならない。結末の付け方も少し苦しいし、シリーズで最上の出来ではないけれど、とにかく面白く読ませてくれるのはさすが。


 ★★ 腰痛は必ず治ります 五味雅吉・たなか京太
00/06/01
実用コミック。五味雅吉氏の「腰痛は仙骨関節のゆがみから生じている」という理論と、その治療のためのバランス・コントロール療法(略称バラコン療法)の紹介。マンガなのでわかりやすく説得力もある。


 ★★ 空飛ぶ馬 北村薫
00/05/08
推理小説として新しいジャンルというべき形を確立した小説。丁寧に書いてはいるが、まあ、正直なところ、「小説」の部分は底の浅さを感じる。しかし推理の部分はなかなか良い。新しいジャンルをつくる創造性は並大抵のものではない。


 ★★ 運をつかむ人・のがす人 さい・ふうめい
00/04/15
内容はそれほど濃くはないし、ハウツー本としてノウハウが詰まっているというほどではないが、まあまあ読んで損はなかった。自分が妙なリスキーな行動で運を浪費していないかどうか、自己チェックの機会にはなる。


 ★★ 村上朝日堂の逆襲 村上春樹/安西水丸
00/04/18
ご存じ村上朝日堂シリーズの第2作目(かな?)。軽く読めておかしいスナック菓子のようなエッセイ。のはずだが、ときどき妙にシリアスなのは著者が三十台も後半の中年の域に入ってきたからかな。


  ★ 欲望の爪痕 S・グリーンリーフ
00/04/13
<私立探偵ジョン・タナー>シリーズ。だそうだ。
出だしはたしかに悪くないが、後半の筋の運びが立体感にかけていて平板に感じる。悪役の造形も今ひとつだし、やや尻すぼみな感じで残念。



  ★ 虚無への供物 中井英夫
00/03/23
まあ、悪くないけれど・・これが戦後推理小説の三代傑作の一つといわれると、どうかなあ。


  ★ もう消費すら快楽でない彼女に 田口ランディ
00/03/06
この人のメールマガジンは面白い。この本の半分以上はそのメールマガジンの記事をベースに書き加えたものだ(もしかしたらぼくが知らないだけで全部そうなのかもしれない)。ただ、中でもぼくが一番面白いと思ったいくつかは抜けている。なぜだろうか。


    丁丁発止 梅棹忠夫・鶴見俊輔・河合隼雄
00/03/08
これだけのメンバーがそろった対談のわりに今ひとつ深みもおもしろさも薄いのは、鶴見俊輔が勝手にしゃべりすぎる点もあるだろうが、やはり司会役の朝日新聞がとろいのだろう。この馬鹿げたあとがきは何なのだ。


 ★★ ペンローズのねじれた四次元 竹内薫
00/02/25
物理学者・数学者のペンローズの幅広い業績を知ることはできる。が、ちょっと掘り下げが足りなかったり、逆に説明不足だったりするところが惜しい。独特の饒舌な文体は悪くないのだが。


  ★ 癒える力 竹内敏晴
00/02/23
最初、「癒す力」だと思っていたら、みずから「癒える」力なのだ、と著者の竹内先生が言っているのを聴いて、そうか、と思い直す。
内容はまあ、最近の随想みたいなものが多くて、看護婦向け雑誌に書かれたにしてはやや焦点が定まらないが、つまらなくはない。


 ★★ ブラックジャックにはなれないけれど 永井明
00/02/22
この人の本はいつも面白いけれど、この本は普通の(というよりまともな)医者たちへの一種のインタビュー集で、かつ著者が珍しく歯切れよくいろいろな意見を発言していて、とくによい出来だと思う。


  ★ サラリーマン心理分析室 小川携之
00/02/14
まあ面白い本だといえなくはない。が、本当にこの人が毎回言うように「よく話し合う」ことで局面が打開できるのだろうか。よく話し合う、というのは、特に相手が家族だと非常にむずかしいのではないか。特に話題が深ければ深いほど話し合いにはなりにくいのではないか、といいう疑問はつきまとう。


 ★★ 見えてきたガンの正体 西村肇
00/01/23
なかなか短い本の中でガン科学の最近を一瞥できて面白い。レビューアーの批評をそのまま本の途中に載せているのも(ちょっと流れをぶつ切れにされるような気はするものの)、いかにも西村先生らしい率直さにあふれていると思う。

しかし、ガン細胞というのは不思議なものだと感じた。もしこの本の描写がそのとおりだとしたら、ガン細胞こそが野生の存在であって、われわれの生物体の通常の細胞は、これを多重の罠で巧妙にしばりつけて家畜化した存在である、というふうに見えてきてしまう。


  ★ 幸運な医者 松田道雄
00/01/07
松田道雄が生涯、保険医にならず自由診療をつづけたことは初めて知った。この人の大きな業績の中に流れている「自由」への熱愛が、この人の方向を導いたのだろう。


1999年



 ★★ 未来のプロフィル アーサー・C・クラーク
99/12/10
購入日が80/3/11となっているから、読み通すのにほとんど20年かかった計算になる。原著の出版は1958年。これを考えると、この本の内容が古びていないことはほとんど驚異だ。その分、期待ほど未来は激変していないということだったのかもしれないが。違いはコンピュータとネットワークの発達くらいのものかもしれない。それにしても、この洞察力。敬服する。


★★★ 新ニッポン百景 矢作俊彦
99/12/06
「週刊ポスト」に以前から連載されていたシリーズ。この本には95年頃のものが納められているが、連載はまだ続いているようだ。よく日本にこれだけ愚行の種が尽きないものだと、いいかげん感心する。
日本で「建築家」を自称したい人間はみな、この本を読んで建築と都市計画の手前勝手な愚かさを反省しなさい。


  ★ 風の歌を聴け 村上春樹
99/12/01
この作家の処女作。これで初期の三部作を読み通したことになるが、読後感は第二作が一番軽くて楽しいような気がする。この小説はなぜ、「風の歌を聴け」というタイトルなのかな?


 ★★ 中国医学のひみつ 小高修司
99/11/15
この本はなかなか良い。日本の漢方の系譜や傾向についてきちんとかいてあるのははじめてみた。ただ、ちょっと胃脾に注意が集中しすぎかなと思う。しかし面白い。


  ★ ミトコンドリアの謎 河野重行
11/30/99
面白い本だ。よく書けている。学問研究のダイナミズムの様なものを感じさせる。ぼくはミトコンドリアの共生説にはどうも不信感を感じるのだが(問題を先送りしているだけのような気がするので)、水素共生説はまあ面白い。
ただ性の起源を、有性生殖の方がパラサイトDNAの種内伝播が速いから、という理由に求めるのはすこし大胆すぎるようにも思える。性が融合相手の細胞質内にあるパラサイトDNAからの防衛機構をもつのは確かだが。


 ★★ ゲーデルの哲学 高橋昌一郎
99/10/12
久々の講談社現代新書。このシリーズはやはり時々おもしろい。
不完全性定理はよく知られているが、ゲーデルの人となりはあまり知られていなかった。この本は、ゲーデルの数理論理学と、彼の個人的な歴史との関わりをわかりやすく書いていてとてもおもしろい本だ。


  ★ ブックストアで待ちあわせ 片岡義男
99/10/05
片岡義男の好きな、アメリカに関するいろいろな本のブックレビューを集めた本。さらりと軽く読めるがなかなか面白い。


  ★ しぐさの日本文化 多田道太郎
99/09/29
日本人のしぐさの中に結実している、無意識の文化をあぶりだした本。


 ★★ 軍事力とは何か 江畑謙介
99/09/27
軍事に関して客観的で数字に基づいた知識を得るのに適した本だ。著者の書き方も比較的冷静で好ましい。


  ★ 日本人と心理療法 河合隼雄
99/08/27


  ★ ユングと心理療法 河合隼雄
06/13/99


 ★★ 不思議な国のラプソディ 福島正実編
09/20/99
81/9/17購入、とメモにあるから読むのに18年を要したことになる。海外SFの傑作選。なかではコグスウェルの「壁の中」が一番よかった。


 ★★ 北海道の諸道(街道をゆく 15) 司馬遼太郎
09/20/99
北海道について初めて知ることが多かった。たとえば「北海道」という名前自体がカイというアイヌ語がもとになっていることなど。


 ★★ 羊をめぐる冒険(下) 村上春樹
99/08/19
今年はほんとによく村上春樹を読んでるなあ。これは彼の初期三部作の最後で物語のはじめ。しかし、これを室内楽にたとえると「ピンボール」はソナチネで、「ねじまき鳥」はシンフォニーとでもいうべきか。


 ★★ 羊をめぐる冒険(上) 村上春樹
99/08/19


  ★ フツーの子の行方 
08/10/99


    発想工学のすすめ 森弘
07/25/99
これはとってもつまらなかった。かつてのこの著者の本とは比べようも無い。抽象論が多くて具体的な事例にかけていた。


★★★ スカートの中の秘密の生活 田口ランディ
07/21/99
うーむ。そうだったのかあ・・。色々ためになる本なのであった。メールマガジンの田口さんのテーマや口調と少し違って、それなりに、いや非常に面白い。


 ★★ うずまき猫のみつけかた 村上春樹
07/21/99
これもなかなか軽くて面白いエッセイだ。しかし今年は村上春樹の本をたくさん読んでいるなあ。


 ★★ ロックは語れない 渋谷陽一
07/03/99
これは面白かった。各ミュージシャンとの対談がけっこうかみあっていて、影響された音楽や取組み方がよくわかる。


  ★ 検死官 P・コーンウェル
06/27/99
ま、面白いといえば面白いのだが、とても興奮する、というほどでもない。


 ★★ 約束された場所で 村上春樹
6/20/99


 ★★ 彼らと愉快に暮らす 片岡義男
06/13/99


 ★★ 源氏供養(下) 橋本治
06/07/99
橋本治のこの本を読むと、はじめて源氏物語の時代の仕組みや人の考え方がわかって大変興味深い。そして紫式部が追いかけたテーマと、橋本の問題意識との距離感がみえてさらに面白い。


★★★ The Goal E. Goldratt and J. Cox
06/06/99
第二版をようやく最後まで読みおわった。巻末の個人的な「My Saga」が結構面白い。
三部作の中では確かに一番サスペンスがあって面白いのだが、最後の方はややだれる感じがある。


★★★ 1973年のピンボール 村上春樹
05/23/99
不思議な味わいの小説だ。軽いし、湿っぽくなくて面白い。
しかし、出て来る道具だてが「ねじまき鳥」に随分共通するものが多い。大事な女性がいなくなって、かわりに奇妙な姉妹にまとわりつかれ、機銃掃射のようになく鳥や、洋館と井戸や、山ほどの音楽や(それも全部洋楽だ)・・。本当に同じテーマをめぐっての序曲と交響曲のようだ。


    遊びの博物誌1 板根厳夫
05/15/99
とりあげている内容は確かに面白いのだが、文章は平坦で今一つ退屈なため、読み通すのに時間がかかってしまった。


  ★ MRPIIは経営に役立つか オリバー・ワイト著 松原恭司郎訳
05/13/99



 ★★ マンガ家のひみつ とり・みき他
05/08/99
マンガ家によるマンガ家へのインタビュー。これがなかなか面白い。


    成熟のための心理童話(下) アラン・B・チネン
99/05/12
正直いって中年童話の方がよく書けていて面白いし、考察にふかみがある。


  ★ 映画監督という仕事 F・フェリーニ、R・チリオ
99/05/07
演劇批評家チリオによるフェリーニ最後のインタビュー。俳優論・プロデューサー論が面白い。また、フェリーニがロッセリーニから学んだ心理的な監督術、あるいは対照物を光の中に捉える事に絶対の自信を持っていることなどがおもしろい。
しかし、竹山氏の翻訳はいつもに似ず、所々学生の直訳のようにぎこちなく、いただけない。


  ★ Critical Chain Eliafu Goldratt
99/04/20


★★★ ねじまき鳥クロニクル2 村上春樹
 予言する鳥編
99/03/19


★★★ ねじまき鳥クロニクル3 村上春樹
 鳥刺し男編
99/04/04


★★★ ねじまき鳥クロニクル1 村上春樹
 泥棒かささぎ編
99/03/15


    成熟のための心理童話(上) アラン・B・チネン


★★★ 木曜の男 G・K・チェスタトン
99/02/28


★★★ 緑色の野帖 桜井由弓雄
99/01/16
この本は非常に面白い。学校で決して教えない東南アジアの歴史の概観を、著者の広い調査旅行とフィールドワークを通じて学ぶ事ができる。古代以前から冷戦以降まで、旅の中のコマをとおして見通せる。東南アジアに関心や関係のある人すべてに薦めたい。



 ★★ 日本語の外へ 片岡義男
99/02/05
分厚い論考。全体のテーマは日本語と英語の対照を軸としたアメリカ論と日本論だ。英語の文法に関してのこの人の意見、たとえば主語と動詞にアクションと責任の論理性をみるところなど、面白い。

しかし、途中に重複やくり返しが多く、推敲の不足を感じさせる。また英語の光で日本語を照らして批評するという面が強くていささか一面的というか、居心地の悪さがある。英語がかくも客観的で論理的、ほとんど倫理的な言語だとしたら、なぜ現実のアメリカはあれほどめちゃくちゃなのだろう?

片岡義男が、英語以外の印欧語をもう一つでも熟知していたら、英語に対する評価がより立体的なものになっただろうと思われてならない。


  ★ 発掘 あるある大事典
99/02/01
日曜日夜の人気番組を本にしたもの。
テーマの幅は面白いが、TV番組のほうが掘り下げが深くてずっと興味深い。本は盛沢山にみえてもすこし食い足りない感じ。


1998年



★★★ 村上朝日堂 村上春樹・安西水丸
12/30/98
スナック菓子のように軽く読めるエッセイ。



  ★ 世界宗教講座 井沢元彦
12/29/98
海外の宗教については不正確なところも多いが、日本の宗教論についてはなかなか優れた洞察もある。怨念を静め和を貴ぶのがが日本の基本原理だというのは面白い。



★★★ 自由を子どもに(再読) 松田道雄
12/22/98




 ★★ 源氏供養(上) 橋本治
12/22/98




    青年 森鴎外
11/27/98
文体には奇妙な面白味があるが、小説としてはどんなものだろう



★★★ 家族関係を考える 河合隼雄
11/09/98
この人の本はすらすら読めるが、かなり内容の濃い本だ。とくに
 親子の絆と夫婦の絆の十字架、
 愛の危険思想、
 核家族化と母性原理、
 死後の連続性と家族、
など示唆に富む話が多い。



 ★★ ビリー・ワイルダー自作自伝 ヘルムート・カラゼク
11/07/98
さすがにワイルダーは面白いなあ。ユダヤ人だとは知らなかったけれども、「名台詞」の感覚は本当にさすが。



★★★ 絶対音感 最相葉月
10/25/98
書き方は鼻につくところも少なくないけれど、音感に関する多様性をうまく報告していて面白い。



  ★ きまぐれフレンドシップPart 1 星新一
10/21/98
軽く読めるが、この人の書評はさすがに面白い。作家としての眼の確かさだろう。



★★★ TUGUMI 吉本ばなな
10/10/98
久しぶりに読んだ小説だ。小説らしい小説。みずみずしい感受性に満ちた文体が気持ち良い。読んで得をした不思議な本。



★★★ TOCクリティカル・チェーン革命 稲垣公夫
10/01/98
GoldrattのTOC理論をプロジェクト・スケジューリングに応用した本。工程の変動と、ゆらぎの伝播についてはTOCと同様うまい方法を取っている。でもちょっとはったり気味のところが例によって欠点か。



  ★ It’s Not Luck E. Goldratt
09/22/98
ザ・ゴールの続編だが、あいにく話がうまく行きすぎて少し興ざめだ。



★★★ TOC革命 稲垣公夫
08/13/98
GoldrattのTheory Of Constraintの初めての紹介本。なかなかよく書けている。



★★★ 愛蘭土紀行 司馬遼太郎
08/02/98
「街道をゆく」シリーズの一つ(2巻もの)。非常に面白かった。
この著者の視野の広さ、調査の徹底には本当に脱帽する。アイルランド文化の裾野と特徴がよくわかった。



    日本語のレッスン 竹内敏晴
06/16/98
うたを中心にした声のレッスンの話。



 ★★ 女性たちよ! 橋本治
06/10/98
橋本治雑文集成I
二十になるまでに知っておかなければならない7つのこと、が面白かった。



  ★ マンガと「戦争」 夏目房之介
06/08/98
これはなかなか面白い。漫画表現の分析者としていい腕前だと感じる。



  ★ もっと奥まで はるの若菜・早瀬まひる
06/06/98
うーん。女性にとってそれほど膣オーガズムが困難だったとは。



  ★ 複雑系を解く確率モデル 鹿取真理
06/01/98
どちらかというと平衡熱力学屋さんの確率モデル論という感じが強いが、臨海現象など一応面白い。
統計力学の基礎が復習できたのが意外な拾いものだったか。



  ★ 親指Pの修行時代(上) 松浦理恵子
05/15/98
いやはや・・最初の内は面白いのだが、どうも「フラワー・ショー」のあたりからちょっと下るねえ。



  ★ 空飛ぶ円盤 C・G・ユング
05/15/98
ユング生前最後の刊行書。自己の再統合の象徴として円盤が登場する現代についての心理学的考察。



 ★★ 罠は餌を欲しがる E・S・ガードナー
04/12/98
A・A・フェア名義のクール&ラム・シリーズ。このシリーズがこんなに軽快で読みやすいシリーズだったとは知らなかった。



★★★ 日本の歴史を読みなおす 網野善彦
03/29/98
これは非常に面白かった。



 ★★ 組織の限界 ケネス・アロー
03/20/98
組織というものを、市場原理の不完全性から、情報論という視点から分析した啓蒙書。なかなか面白い。



    冷たいパフォーマンス 清水徹+山口勝弘
03/17/98
ポストモダン講義、と題されたレクチャーブックスの一冊。まあ、こんなものかという程度。



    宇宙を語る 立花隆・対談集
03/15/98
宇宙飛行士や関係者等との対談。正直いって退屈だった。



    牛への道 宮沢章夫
03/11/98
もっと笑えるのかと期待してかったのに、ぜんぜんつまらなかった。



  ★ カネと非情の法律講座 青木雄二・監修
02/20/98
実際の執筆は「星企画」の名前で弁護士がかいているものと思われる。日本の民事訴訟の問題点などがうかがい知れてなかなか面白い。



  ★ 生物進化を考える 木村資生
02/12/98
分子進化の中立説を中心に、著者の進化観をひろく述べたもの。
中立説自体はさほど驚くべき説とも思えないが(淘汰万能論のほうがよほど極端)、本全体としてはなかなか面白い。



  ★ アメリカ性革命報告 立花隆
02/01/98
いかにも立花隆らしい切り口の本。ただ、精神分析についてやや断定的な気がするが、これも持ち味か。



 ★★ 仁義なき映画論 ビートたけし
01/18/98
さすがに映画監督の映画論だ。
心底感心した。



 ★★ 日本の仏教 渡辺照宏
01/08/98
日本の仏教に関する良い概観を与える書。



  ★ ハシモト式古典入門 橋本治
01/01/98
一部「風雅の虎の巻」と重複する内容も有るが、和漢混交文の起源を述べていて興味深い。



1997年



 ★★ ペスト アルベール・カミュ
12/20/97
重厚なSFとしてお薦めできる。



 ★★ 続・法律英語のカギ 長谷川俊明
12/18/97
英米法の概念を理解するには絶好の本。
ケーススタディも巻末についていてなかなか興味深く読める。



 ★★ 砂絵くずし 都築道男
11/18/97
トリッキーな「なめくじ長屋捕り物さわぎ」の傑作選。
「天狗起こし」など、なかなかいい。この人の文章力にもあらためて感心する。



  ★ ぼくはこんな本を読んできた 立花隆
11/17/97
立花隆の読書自慢みたいにもとれる本。しかし彼の読書量(速読だけど)と守備範囲の
広さには驚かされる。



 ★★ ラクラク園芸 平城好明
11/09/97
原理のわかる本で、呼んでいて楽しかった。



★★★ 妻を帽子とまちがえた男 オリバー・サックス
10/20/97
断片的なエピソードの積み重ねのような本だが、非常におもしろい。神経心理学という興味深い新しい分野を照らし出す著書。
タイトルの話しと、数学的な双子の話しが印象に強く残った



  ★ SAP R/3ハンドブック ERP研究会
10/03/97
いっしょにかいた本。
それなりに参考になるが第4章の演説みたいなのは余計だったのではないか。



  ★ 本読み術 私生活の充実 片岡義男
09/25/97
ベッドサイドで少しづつ読むのに適した本。
写真(著者本人による)が美しい



  ★ 90’s (ナインティーズ) 橋本治
08/30/97
後半は残念ながら退屈だが、

「東ローマ皇帝という夫にとり残されたローマ教会という妻が、ゲルマン民族を養子にして教育訓治したのに、成長した子に最後は裏切られることになった」

という分析は非常におもしろい



★★★ 複雑系 RICHARD WORDROP
08/21/97
ラングドンの「人工生命」「カオスの縁」そして鳥群のシミュレーションが興味深かった



★★★ アンダーグラウンド 村上春樹
07/31/97
非常に迫力のある出だし。ヘヴィーである。ただ、さすがに後半は少しだれる。
このような本が本職のジャーナリズムから生まれないこの国は不幸だ。



ワークスペース・白幡

お気軽にお問い合わせください

PAGETOP
Copyright © マネジメントのテクノロジーを考える All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.