一般に企業のビジネスには、計画-実行-評価(Plan – Do – See)のマネジメント・サイクルがある。製造業における生産のマネジメントにおいては、このサイクルが
 (1) Plan 「生産計画」
 (2) Do 「製造指示・監視」(生産実行)
 (3) See 「実績報告」
にそれぞれ対応すると考えて良い。

なお、生産の実行がカッコの中に入っているのは、それが“マネジメント”の範囲に入らないからである。製造業の付加価値は、生産の実行、すなわち加工や組立などの「直接作業」によって生み出される。マネジメントは間接作業であって、それ自体では何も価値を生み出さない。しかし、直接作業である生産実行を、効率的に運営することを助けている。これによって、間接的に価値をもたらすのである(つまりマネジメントは生産現場を支える存在であって、「現場より上」の仕事ではない点に注意)。

生産のマネジメントには、年・半期単位のサイクル、月単位のサイクル、日単位のサイクルなどが存在する。これらサイクルは、「半期予算会議」「月次生産会議」「毎朝の工程会議」などの会議体によって回されることが多い。伝統的に日本企業は月給制であり、受発注も月締め決済が中心なので、月次が主となっている(米国は週給制であり、週次サイクルも重視されるが、日本では月またぎをきらう)。また日よりも短い単位で回すこともある。

製造業のマネジメントでは、あつかう情報の種類も量も多い。製品の品種も多く、部品点数はもっと多く、工程数も要員数も保管場所も多い。それぞれに、過去の実績と未来の予定が紐付いている。だから、手作業だけでこれを追いかけようとするとすぐにパンクする。そこでコンピュータによるシステムが道具として必要になるわけだ。

生産のマネジメントを支える情報システムのソリューションの位置づけを、上述の枠組みで考えると

 (1)計画系ツールとしてのSCMソフト(特にスケジューリング・ツールであるAPS)
 (2)現場実行系ツールとしてのMESソフト(製造管理ないし製造実行システム)
 (3)本社でのトランザクション管理および実績評価ツールとしてのERPソフト

に区分できる。これらは、Plan-Do-Seeのワークフローを形成していることが望ましい。

なお、製造業は固体製品を中心としたディスクリート系と、流体製品を中心としたプロセス系に大別することもできる。電機や自動車や食品は前者であり、ガスや化学や飲料は後者である。後者では人間より装置が製造の中心となる。そして、秒単位の制御が必要となる。これを統括するために、

 (4)制御システムとしてのDCSソフト

が必要となる(PC+PLCで実装するケースもある)。これらを大まかにマッピングしたのが次の図(「MES入門」第3章に掲載)である。

図3-5 SCM、ERP、MESそしてスケジューリング

さらにいうならば、生産に隣接する業務範囲として、物流および購買がある(会社によっては同一組織で動かされる)。そこで、これも図で示すことにしよう。
 (5)物流実行系ツールとしてのWMSソフト
 (6)購買伝達系ツールとしてのWeb-EDIソフト

図2 製造業の業務範囲とソリューションMAP

むろん、日本の製造業で、ここまですべてのITツールを完備した企業はまだ、まれだろう。必要性の高い部分から順次、整備していけばいいわけである。そして、市場での競争が激しい現代において、むずかしいがゆえに人間系によって取り残されがちな部分が、スケジューリングの機能だと思われる。