進捗率の計算と図的表現法

製造業における進捗管理は、ふつうロットやワーク単位に行われる。どれだけの量をいつまでに作らなくてはならない、との予定に対し、現時点ではこれこれの数量までできている、というモニタリングを、各工程ごとに、ロットやワークの状況から計算する。全工程がロット・フォア・ロットで流れる場合やフロー・ショップの場合は、最終製品レベルで個々の生産オーダーの進捗率を計算することも簡単だ。

しかし、ふつうのジョブ・ショップ型組立加工業では、話はもう少し複雑だ。共通部品をロットまとめして製造したりするので、最終製品の生産オーダー単位での進捗率計算は簡単ではなくなる。とくに大型の産業機械では、詳細設計がすべて終わらぬ時点で部品製造が始まったりするので、設計を含めた進捗を考えなければならない。

一品個別受注生産の場合は、受注から設計・資材調達・製造・検査・納品までの一連の流れを、一つのプロジェクトとしてとらえることができる。したがってプロジェクト進捗管理の技法がフィットしやすい。プロジェクト進捗管理では、プロジェクトを構成する全てのアクティビティおよびマイルストーンにウェイトを設定して、進捗度を計算する。

ただし、ウェイトの設定には金銭つまり費用が用いられることが多いが、注意すべき点が一つある。費用基準だと購買や製造に比べて設計や検査作業のウェイトが小さくなりすぎるのである。そこで、設計完了や検査終了といったマイルストーンに大きなウェイトを配布して、全体のバランスをとることが望ましい。

このプロジェクトの進捗度を図で表現する方法の一つに、「トレンドチャート」がある。トレンドチャートは横軸に工期、縦軸に出費をとって予定対実績を2本の線で表示する。拙編著「情報処理技術プロジェクトマネージャ完全合格対策」(2002年度版・125ページ)に解説があるので参照してほしい。

ところで、これに関して最近ある読者から質問のメールをいただいた。それは、『あるマイルストーンで計画と実績を比較して、実績が計画よりも右側に来ていたら、それは予定よりも進捗が上がっていると解釈すべきではないか(他の参考書はそう書いてあった)』というものだ。

これは、よくある誤解である。おそらく横軸の「工期」という言葉が誤解の元なのだろう。これはただ単純に、プロジェクト開始時点から経過した時間をあらわす、と読めばいいのだ。たとえば、プロジェクト開始から6ヶ月後に、詳細設計完了というマイルストーンが予定されていたとする。これに対して、実績は6.3ヶ月かかったのだとしたら、明らかに作業は遅れているわけだ。

おそらく、他の参考書の執筆者は、これを「横軸=進捗率」と誤解してしまったのではないのだろうか。そして6ヶ月目の進捗率が6.3なのだから、これは予定よりも進んでいる、と解釈したのだろう。しかし、トレンドチャートの点はマイルストーン通過点を意味しているのだから、その理解は間違いである(もし横軸の「工期」を進捗率と同義と解釈したら、各マイルストーンの実績値は予定された位置に必ず縦に並んでしまうはずで、グラフとしては役に立たなくなってしまう)。

なお、アーンドバリュー分析でも、横軸に時間・縦軸に出費のグラフを作って、進捗と出費の両方を表すグラフを作る。こちらについては、同書421ページを参照されたい。

トレンドチャートでは、マイルストーンをきちんとこまめに定義しておかないと、実績が遅れているのか進んでいるのかがわかりにくくなる。これに対してアーンドバリュー分析では、マイルストーン定義の有無にかかわらず、任意の時点で予定と実績の進捗を比較することができる。そのかわり、グラフの中の線が3本になってしまうので、読取りに多少のスキルが必要になる。どちらを使うかは、目的と効果の観点から判断して選ぶべきであろう。