ロジック・ネットワーク・スケジュールとは何か

ロジック・ネットワーク・スケジュールとは何か

昨年『時間管理術』を執筆していたとき、エクササイズ2「『できる人』の仕事ぶりを見て学ぶ」の節で、時間管理の上手い人の条件の一つに“スケジュールのバーチャートを必ず引いている”と原稿に書いた。そうしたら担当の編集者の人から、「こんな人は普通いませんよ。」とコメントされてしまった。結局、そのフレーズは削除することにした。

そうか、そんな人は普通いないのか。それが私の率直な感想だった。というのは、私のまわりで仕事のできる人は、“そんな人”ばかりだからである。仕事の相談をしたら、内容の後に、必ず段取りを決めて、バーチャート(ガント・チャート)を描かないと安心できない。そんな人の多いエンジニアリング業界で、私はそれなりの年数働いてきた。しかし、経済新聞社の編集局の人の感覚の方が、たぶんずっと普通だろう。

ところで前にも書いたとおり、最も多くのプロマネが使っているPMツールは、実はExcelなのだという。Excelで何をやっているかというと、タスクリストの管理やコストの集計といいたいところだが、一番ポピュラーなのはたぶんガントチャートによるスケジュール作成だろう。私も、あちこちの会社のプロジェクトで、Excel丸出しの線表をよくみかける。何せExcelの作図機能はある意味、融通無碍だから、Microsoft
Projectなどではかけないような注釈やら色分けやらを駆使できるというわけだ。

それがわるいと非難するつもりは毛頭ない。全然ガントチャートを描かないよりは、描いて計画のベースラインとするほうが、ずっと良い。しかし、それで十分だとは言えない。バー・チャートだけでスケジュール・コントロールするのは危険なのだ。なぜなら、単なる線表には、ロジックが無いからだ。プロジェクト・コントロールには、ロジック・ネットワーク・スケジュールが是非とも必要なのである。

ロジック・ネットワーク・スケジュールとは何か。それは、全タスク(アクティビティ)間の論理的順序依存関係をきちんと定義したスケジュールである。基本構造の設計が決まらないと、主要部品の購買に着手できない。主要部品の購買が完了しないと、組立工程に着手できない--こうした順序関係のロジックである。これをきちんと定義していくと、結局プロジェクトのスタート点からゴール点まで、全体として網目のような図表ができる。これをプロジェクト・ネットワーク・ダイアグラムとよぶ。

そして、プロジェクト・ネットワーク・ダイアグラムができると、隘路(クリティカル・パス)が定まる。つまり、本当の納期が見えてくるわけだ。そして、あるアクティビティの着手日や期間を変更したら、後続のアクティビティにどう影響するかも、すべて論理的に決まるし、自動計算もできる。これがロジック・ネットワーク・スケジュールなのである。ちょっと、次の図を見てほしい。

単純なガントチャートでは、なんとなく階段型にタスクがつながっていると、それらがすべて時系列的におこるのかな、と見えてくる。しかし、実際には図の下のようになっているのかもしれない。この場合、Bの期間が長くなっても、Cの開始には影響しない。Excelで線表を引いているだけでは、AやBに変更を加えた際、後の方をすべて手で直さなければならないばかりか、どこをどう直せばいいのか、すぐに判断できない。タスク数が10や20ならそれでもいいだろうが、50や100を超えたらもうお手上げである。また、各タスクに必要なマンパワー資源を見積もって、その積算を行う、などといった計画作業にも、ロジック・ネットワーク・スケジュールは必須である。

(余談だが、エンジニアリング業界でロジック・ネットワーク作成する際は、Microsoft ProjectではなくPrimavera
Project Plannerというソフトが国際的なデファクト標準として使われている。ただしこれはプロの使う道具であって、コントロール対象のタスク数が100-200以下の規模だと、かえってお荷物という気がしなくもない)

いずれにせよ、優れたプロジェクト計画を作るためには、ガントチャートは必要条件に過ぎず、ロジック・ネットワークの定義が十分条件であるということを忘れるべきではあるまい。

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