RFP
Request for Proposal

提案依頼書。調達における引合いプロセスの主要な書類で、主に受注生産品の見積依頼のために、発注者がサプライヤー候補に配信する。見積依頼書(RFQ=Request for Quotation)ともいう。調達において複数のサプライヤー候補から一社を決める際に、透明かつ公正なプロセスとなっていることを保証するために必要となる。

調達のプロセスは一般に、自分が購入したいものの種類と特性によって異なる。たとえば、
マテリアル(モノ)を買うのか、サービスを買うのか
●購入相手のサプライヤーは一社のみか、複数社あって決まっていないのか
●直接資材(製造に用いる資材)を買うのか、間接材やオフィスサプライ品を買うのか
●特定の用途に紐付いたモノを買うのか(「都度手配品」ないし「引当品」などとよばれる)、特定の用途が決まっていないストック在庫用に買うのか(「在庫品」「常備品」などとよばれる)
●自社の指定する仕様や図面で買うのか、それともサプライヤーの標準仕様品を買うのか
●購入品が見込生産なのか、受注組立生産なのか、繰返し受注生産なのか、個別受注生産(サプライヤー側の設計行為を含む)なのか

などによってかわる。むろん、上記は互いに完全に独立ではなく、依存関係がある。

とくに重要なのは、4番目(誰が仕様を決めるのか)という点である。もし買いたいモノが、売り手の商品カタログの中にあるような場合、ふつうはサプライヤー側は見込生産である(滅多にオーダーの無いような高級商品の場合は繰返し受注生産になるケースもあるが)。その場合、単に価格と在庫の有無をたずねればいいわけで、RFPのような手間をかける必要はない。たとえばUSBメモリを買いたい、という場合なら、営業マンに電話をかけるか、店に行くか、価格コムみたいなサイトで調べれば事は済む。

売り手の商品カタログに基本モデルはあるが、オプションがいろいろあって自分の希望を入れたい、という場合もある。多くは受注組立生産の品目である(PCとか自動車など)。この場合もサプライヤーは決まっているのだろうから、RFPなど必要がない。

RFPは複数のサプライヤー候補があって、自社仕様のマテリアルないしサービスを発注する際に、価格・納期・品質の観点から公正に比較して、適切なサプライヤーを選定する場合に必要となる。当然、発注先は繰返し受注生産ないし個別受注生産となる。いわゆる情報システムの調達にRFPが登場するのは、このような理由があってのことである。

もともと購買とは、自社が必要とする仕様に対して、サプライヤーが供給可能な性状のマテリアル(ないしサービス)をマッピングする、という作業が中核にある。ここで重要なのが、“Apple to appleの比較”の原則である。これはCompare apple to orangeという英語の言い回しから出た表現で、「リンゴ1個とオレンジ1個の値段を比較して、高いとか安いとか議論すること」の愚を戒めている。カローラとスカイラインの値段を比べて、安い方を買おうという人はいまい。比較するのならば、同じ土俵に乗せて比較しなければならない。同じ土俵とはすなわち、自分が何を求めているのかという点(=要求仕様)である。

ただし念のため書くが、「カローラがほしい」というのはRFPに書くべき要求仕様ではない(そんなRFPを日産やホンダのディーラーに送りつけて“これで公正だろう”と思ったら愚かだ)。要求仕様とは、いわば、「リンゴがほしい」と固有の商品イメージを書くのではなく、「甘くて、そのまま食べることも煮て食べることもでき、1個が150g前後で、冬の間も入手可能であり、消化によい国産の果物」という風に、使用目的を基準に抽象化した条件づけのことを指す。ここまで指定すれば、スイカや苺を持ってくる売り手はいないだろうし、100g以下の姫リンゴを提案するサプライヤーも失格となる。

RFPに規定すべきことは、上記のような「技術的仕様」(=What)だけではない。同時に、必要な数量はどれだけか、納期はいつか、検収条件は何で支払条件はどうか、といった調達条件(=How)についても規定しなければならない。

さらに重要なことは、買い手とサプライヤー相互の「スコープ・オブ・ワーク」を決めておくことである。機材でいうなら、輸送費や設置費はどちらが持つのか、予備品はどこまで含まれるのか、支給部品はあるのか、マニュアルや設計図書はどこまで含めるのか、といった事項であるし、情報システムなら、ユーザ側の遂行体制はどうするのか、業務帳票は提供するのか、レガシーデータの移行はどちらが責任を持つのか、トレーニングはどこまで含まれるのか、テスト環境は誰がどう提供するのか,等々といった事項がこれに相当する。これらを箇条書きにして、買い手と売り手の「星取り表」を作るのが良くやる方法だ。

これはいわば、売り手と書いての『権利義務関係』を規定しているわけである。受注生産品を製作し納品する作業は、ある意味で買い手と売り手の協力で進められる。つまり、お互いに結果に対して責任の一部を負っている。これを買い手が忘れてしまうと、いい成果は得られない。別の言い方をすれば、RFPのプロセスというのは他人行儀なのである。そこでは、甘えや貸し借りやなれ合いは排除される。

むろん買い手のニーズが、「甘くて食べられる果物なら何でもいい」という程度のアバウトなものならば、提案されるものはリンゴでもオレンジでも良いわけだ。しかし、その場合はもはや価格の比較は意味を失う。RFPを用いた購買プロセスとは、“価格は品質・性能に比例する”という精神に裏付けられているので、要求品質にアバウトな会社は買い手能力を疑われる。すなわち、RFPは、売り手を条件付けるだけではなく、買い手の能力をも試すものなのでのである。