MRP
資材所要量計画
Material Requirement Planning
「革新的生産スケジューリング入門」第3章講義3
「BOM/部品表入門」第3章Q1

MRPとはMaterial Requirement Planningの略で、1960年代にアメリカで生まれた計画手法である。日本語では『資材所要量計画』と訳される。BOM(部品表)と標準リードタイムを元に、工場内のすべての従属需要の量と時期を、独立需要から計算するために開発された手法である。最近の欧米系有力ERPパッケージのほとんどは、MRPの考え方をもとに生産管理機能を実装している。

生産計画で重要な概念に、資材の「所要量」がある。ある時点に必要なモノの数量のことで、これには総所要量と正味所要量がある。

 正味所要量=総所要量-引当可能在庫量

いま、再来月の月末までに製品Sを150個出荷する注文をうけたとしよう。このとき総所要量は150である。製品Sは現在、工場倉庫にすでに70個積み上がっている。ただし今月中に、20個は出荷する予定がすでに決まっているとする。すると、今月末の引当可能な在庫量は、70-20=50個となるわけだ(安全在庫量の考慮は省略)。このとき正味所要量は、150-50=100個だから、製品Sを再来月末までにあと100個作る必要がある。つまり、製品の正味所要量とは、生産の指示(生産オーダー)と同じ意義を持つ。

さて、MRPではBOM(部品表)を中心にして、製品の総所要量(これを独立需要とよぶ)から部品の正味所要量(これを従属需要とよぶ)をもとめる。

製品Sの部品構成はつぎのとおりだ。Sは「部品X」1個と「部品Y」1個から組み立てられる。部品Xを作るためには、材料Zが2個と材料Wが1枚ずつ必要だ。部品Yは、側板4枚と背板1枚から作る。材料Wと部品Yはすべて同じ材料Vからつくられる。

これを「構造型部品表」(ストラクチャー型BOM)で表現すると、次のようになる(等幅フォントで見てください)。

製品S━┳━(1)部品X━┳━材料Z(2)
    ┃        ┗━材料W(1)━━━材料V(1)
    ┃
    ┗━(1)部品Y━━━材料V(5)

カッコ内に入っている数字は、親品目(自分から見て左側にある品目)1単位を作るのに必要な数量である。これを員数ともよぶ。

さて、これから何がわかるだろうか。製品S=100個の独立需要に対して、部品X・Yの従属需要が同じく100個ずつ、材料Zが200個、材料Wが100枚、そして材料Vが合計600枚(部品W用100枚・部品Y用500枚)となることが計算できる。

いま部品Xのストックが60個、部品Yのストックが80個あるとすると、
 
 部品Xの正味所要量 = 100 -60 = 40(個)
 部品Yの正味所要量 = 100 -80 = 20(個)

ということになる。そして、その下の材料のレベルで、材料Zが10個、材料Wが50枚、材料Vが60枚あったとすると、材料Zの正味所要量は以下のような計算になる。
 
 材料Zの正味所要量 =(部品Xの正味所要量)×(部品Xあたりの材料Zの員数)-(材料Zの在庫量) = 40×2 - 10 = 70(個)
 材料Wの正味所要量 = 40×1 - 50 = -10(個)

ということは、実際にはストックですべてまかなってしまうから、正味所要量はゼロになる。最後に、材料Vの正味所要量 = 20×5 - 60 = 40(個)だ。

これで、すべての工程や購買先に対する手配数量がきまる。このような計算を<部品展開>と呼ぶ。この計算自体は、かけ算と引き算だけの単純なものだが、製品や部品の数が多い場合はとうぜん計算機が必要になる。

なお、客先需要に基づく「需要オーダー」から製品在庫を引き当てた結果(=正味所要量)は、工場に対する「生産オーダー」になる。また、生産オーダーから部品展開をおこなってもとめた内製部品の正味所要量が、その部品の「製造オーダー」であり、購買品の正味所要量が「購買オーダー」だ。

さて、ここまではもっぱら数量の話だけだ。MRPが手配数量の計画手法からスケジューリング手法へと発展してゆくのは、ここに標準リードタイムの概念が持ち込まれてからのことである。標準リードタイムとは、各工程で必要とされる作業期間で、部品の加工種類ごとに決める。

製品Sの例では次のように仮定しよう。

 ・最終組み立て・検査のリードタイム=6週間、
 ・部品Xを材料Zと材料Wから作るリードタイム=2週間、
 ・部品Yを材料Vから作るリードタイム=2週間、
 ・材料Wを材料Vから作るリードタイム=2週間

MRPでは、正味所要量の部品展開を行うときに、標準リードタイムをもちいて、必要な時期を納期からさかのぼって計算する(LPST)。これによって、どの工程の作業を・いつ・どれだけの量やらなければいけないかが、正確にきまるのである。

上記の例でいくと、製品Sの最終納期がもし3ヶ月後だとすると、
 
 製品S 正味所要量=80(個) 必要時期=12(週)
 部品X 正味所要量=40(個) 必要時期=12-6=6(週)
 部品Yの正味所要量=20(個) 必要時期=12-6=6(週)
 材料Zの正味所要量=70(個) 必要時期=6-2=4(週)
 材料Wの正味所要量= 0(個) 必要時期=なし
 材料Vの正味所要量=40(個) 必要時期=6-2=4(週)

ということになる。

材料W用と部品Y用の両方を一緒にして(40+10=50枚)、2週目に必要とするのではなく、別々に、2週目に10枚、4週目に40枚を手配すべきなのだということを理解しほしい。

MRPのロジックは「必要な時期に、必要な量だけを手配する」だから、部品や材料の作りすぎ・過剰ストックはゼロになるはずだ。ある意味では非常に論理的で、欧米人には受け入れやすい手法だといえる。

MRPの計算では、時間刻みの単位を「タイム・バケット」とよぶ。これは日でも月でもいいのですが、欧米では週単位を採用している場合が多い。タイム・バケットを週単位にする場合は、納期の日が異なる複数の生産オーダーであっても、それが同じ週にはいっていれば(たとえば月曜日のオーダーも金曜日のオーダーも)、その週のオーダーとして集計する。また、製造のリードタイムが実は3日でできるものでも、標準リードタイムは1週間ということになる。その程度の目の粗さで計画をとらえているわけである。

目が粗いというのは、それだけ管理レベルが低いともいえる。が、逆にみれば、その程度の粗さをもって計画を立てれば、現実に起こる変動を吸収できるというふうに考えることもできる。3日でできるはずの工程が、機械の故障で止まってしまったとしても、故障が1日で修理できれば結局そのバケット内で完了できるわけだ。

MRPの所要量計算自体は単純で、ほとんど当たり前の理屈のように思える。しかし、この計算を正確に行なうためには、BOMがきちんと整備されており、かつ製品や部品の引当可能な在庫量が正確に把握されている必要がある。MRPの理屈は単純でも、実行は簡単でない理由は、この点にあるのである。