まず、カードとカードボックスを用意しよう。カードの大きさはとくに決まりはない。B6サイズでも3 x 5インチでも、いわゆる「京大型カード」でもいいが、現場で使うのだから少し堅めで丈夫な紙質のものが良い。それから、カードボックスには、見出しのついた仕切り紙を15枚ほど入れておく。

仕切り紙の見出しには、「月曜日」「火曜日」「水曜日」・・という具合に1週間分の曜日を2セット、書き込んでおく。残る1枚は、「3週以降」としておく。あるいは、もし几帳面な人なら、曜日で2週間分ではなく、「1日」「2日」・・・「31日」「翌々月以降」という風に、1ヶ月分+1枚=32枚用意するのでもいい。

さて、生産計画にしたがって先日付の製造指図が発行されたら(あるいは、MRP用語風にいうと、製造オーダーが計画状態Planned からリリース状態 Releasedにディスパッチされたら)、その製造指図番号と内容をカードに転記する。もちろん、製造指図書自体がカード形式で出力されるならもっと良いが、これは加工図面や製造仕様書やピッキングリストなどを一緒にするケースも多いので、必ずしもカード型が便利とは限らない。だからカードに必要な最小限の情報だけを転記するわけだ。

カードに転記した製造指図には、着手日が指定してあるはずである。そこで、そのカードを、着手日にしたがって、カードボックスの該当日の仕切り紙の後ろに差し立てる。こうしておくと、週次あるいは随時発行される製造タスクが、着手日付ごとにカードボックスにソートされて並ぶことになる。

さて、毎朝、当日分の仕切り紙の後ろに入っているカードを出して並んべてやれば、その日のやるべき製造作業が全部一目で分かる。その日の作業順序を考えて、班員に渡してやる。そして、一日の仕事をおえて就業時間になったら、作業日報にしたがい、完了した製造タスクのカードは廃棄する。その日のうちに完了できなかった仕事は、カードボックスの翌日の仕切り紙のところに差し立て直す。こうして、一日単位で仕事を回していくのである。

この仕組みは単純だが、やるべき仕事の「見える化」手法としては便利で分かりやすい。先日付の作業指示を受け取ったとき、机の上に積んで記憶しておくだけだと忘れがちだ。しかし、カードボックスに整理しておくと、当日の朝になると、自動的にカードが出現(カムアップ)してくる。そこで、これを「カムアップ・システム」と呼ぶようになったらしい。

ところで、ここまで読んだ方は、“なーんだ。工場の現場の話かあ。じゃホワイトカラーの自分には関係無いな”と思われたかもしれない。ところが大ありなのだ。今日ではむしろ、オフィスワークにこそ、カムアップ・システムが必要だからである。

昨今の情報化の進んだ製造現場では、むしろ端末をたたけば先日付の製造オーダーをすぐ見ることができる。ところが、オフィスにいるホワイトカラーは、明日、あるいは来週の今日、どの仕事がどれくらいの量あるのか、誰にも見えない。つまり、作業負荷が誰も分からない(上司でさえ)という状態なのである。なぜか? 理由は単純だ。オフィスワークでは、だれも「製造オーダー」に対応する「ワークオーダー」を発行してくれないからだ。上司も、隣の部署も、客先も、あなたに口頭で頼むか、せいぜい電子メールで送ってくるだけだ。

そのような「見えない」状態で仕事を進めていくと、困ることは何か。それは納期が守れないことである。だって、仕事がどれくらい忙しいのか客観的にわからない(自分でさえ分からない)のだから、当たり前ではないか。

そこで、私はオフィスでこそカムアップ・システムを使うことをおすすめしたい。カードボックスのかわりに、ファイルフォルダーをつかう(厚紙のものでも透明のものでもいい)。そのフォルダを、32冊、用意するのである。そして、「1日」から「31日」まで見出しをふっておく。

あなたが、誰かから会議のお知らせメールを受け取ったとする。会議用の配付資料が添付されている。そこで、それをプリントアウトして、会議の日付のフォルダに差し込んでおく。あるいは、あなたは来週、顧客のところに打合せに行かなくてはならない。そのための資料を用意したら、来週の該当日のフォルダに入れる。上司にレポートを宿題として渡された。そうしたら、A4の紙にやるべき内容を要点だけ書いて、フォルダにはさむ。こうすれば、自分がやらなくてはいけない仕事(To Do)は、すべてフォルダのなかに、物理的な実態として見えてくる。To Doリストの見える化である。

フォルダは、かならず日数分用意しなくてはいけない。2~3日分ずつまとめて、などとやると見づらくて混乱するばかりである。また、自分は紙は嫌いだ、なるべく電子ファイルで画面上で処理したい、という方は、かわりにメーラーに31日分、フォルダを作ってもいい。口頭で受け取った依頼は、メモして自分あてにメールとして発信(受信)しておけばいい。

このようなやり方をはじめると、気がつくことがある。それは、タスクというのは着手日を決めることがとても大事だ、という単純な原則である。着手がそれより遅くなるると、納期に間に合わなくなるような、適正な着手日を見積もること。それが、オフィスワークにおけるスケジューリングの最大のポイントなのである。