オーダーとタスクと作業とロットは、かならずしも一対一に対応しない、と前回のワンポイント講義「オーダーとはいったい何か」で書いた。ときおり混同される理由の一つに、APSでの言葉の用法の不統一がある、とも。むろん、これは逆にも解釈できるだろう。日本での概念理解に統一性がないため、種々のAPS製品で用語にばらつきがあるのだ、と考えてもいいのだ。

用語定義が必要ならばAPICS Dictionaryがあるじゃないか、と議論される向きもあるだろうが、私は賛成しない。製造業における生産の方式には幅広いバラエティがあり、さらにそれは企業風土の影響を受けやすい。APICSはアメリカの組織であり、そこでの用語にはアメリカ流の企業のあり方、概念が色濃く流れている。英語での定義を参考にしながらも、日本人は日本人のための用語を考えるべきだと思う。

そうは言っても、そもそも計画系の業務は日本で根付きが浅い。このため、外来語をかりてくる必要がある。その良い例が「タスク」だ。これには「課業」という立派な(?)翻訳があるにもかかわらず、知る限りではこの日本語を使っている企業はほとんどない。

タスクとは、「やらなければいけない作業」を意味する。仕事を計画するときには、まず必要な作業項目をリストアップし、それに必要なリソースを割り当て、そしてタイムテーブルを作成する。この最初の段階でリストアップされるものがタスクである。プロジェクト計画に従事している人ならば、タスク・リストの作成が第一段階であることを肌身で知っている。タスクは工場や設備・リソースの側から見ると負荷(load)の領域に属する。

ではタスクとオーダーとはどこが違うか。オーダーとは指示情報であり、誰かから誰かに対して発行され受け渡されるべきものだ。タスクはなすべき作業自体をあらわしており、誰かが実行しなければならない。

オペレーションという言葉は、上記の「作業」に対応する。オペレーションには、インプットとなるべき資材・副資材等と必要なリソース、定義・標準化された手順、期待される所要時間や効率などが付随する。タスクはオーダーという指示に従って、具体的な資材やリソースに結びつけられることで、「オペレーション=作業そのもの」に具現化するのだ。

では、ロットとは何か。ロットとは、連続的な製造作業によって生みだされた結果(製品・半製品・部品等)のかたまりを指す。ここでいう連続的な作業とは、一つのセットアップ(段取り)から、次のセットアップまでの間に行なわれるオペレーションである。その産物は、基本的には均一な品質を持つことが期待される。したがって品質管理でロット履歴が重視されるのだ。つまりロットは作業の「アウトプット」である。
(ついでにいうと、焼鈍や造粒などの回分処理装置を使った作業の結果生み出される製品のまとまりを「バッチ」とよぶ)

ロットやバッチは、またも外来語である。すとんと腑に落ちる訳語があまりない。我が国では、「製番」で何でも串刺しにしてコントロールしてきたためだろうか。

オーダー(指示)によって、タスクが具体的なオペレーションに転化し、オペレーションの結果としてロットやバッチが生み出されていく。この“因果転生”の関係が理解されれば、これら用語の混乱も少なくなるだろうと期待したい。