スケジューラやAPSはシミュレーション・ツールだ、という誤解がときどきある。このいい方は、しょせんAPSはオフ・ラインの検討ツールであって、ERPや生産管理パッケージのように常時使いつづける『基幹業務系』システムではない、という風な理解にもとづいている。

APSで月次の、あるいは週次のスケジュールを立てたら、結果を生産現場や購買に渡して、それで計画担当の仕事はおしまい。計画を流した後の急な飛び込みや修正は、現場に近い部門が日々の調整をしながらフォローすればいい。そして、1サイクル経ったら、またAPSを回して基準となる計画を作る・・そんなイメージでAPS運用を考える人がけっこういるようだ。

こうした誤解が生まれる背景には、計画と実行は別モノだ、という感覚がある。現場作業の遂行は、必ずしもスケジューラが決めた通りには行かないはず、と。たしかに、そのとおりだ。受注の変動についてはいうまでもないが、工場側についても、機械設備のトラブル、材料部品の入荷の遅れ、歩留まりの思わぬ低下・・さまざまな事情でスケジュールはくるっていく。だからAPSは「机上の計画」を立てるシミュレーションの道具に過ぎぬ、というわけだ。

だが、このような使い方では、APSのパワーは半分しか活きない。そこに、「ローリング・スケジュール」という考え方が欠けているからだ。

ローリング・スケジュールとは何か。それは、簡単にいうとスケジュールの連続性である。APSはスケジューリングの結果を、スケジュール・ファイルとして保存する。このスケジュールは巻物が続くように、過去から未来に向かって、ずっと途切れることなく記録されつづけていかなくてはならない。

工場を4月1日からスケジューリングする際には、3月31日に仕掛りとなっている製造作業を、次の日もつづけているはずである。やりかけの作業を全部、「ご破算で願いまして」で、まっさらの状態にもどして計画を立てたら、現場は困ってしまう。

スケジュールを立案するときには、ある日付を決めて、その日から先についてのタイムテーブルを考える。これを計画開始日というが、新しい計画を立てるときに、計画開始日の時点で行なわれているはずの作業を把握していなければならない。そのためには、前回立てて実施に移しているはずのスケジュール・ファイルを読み込んで、その先に追記するような形で処理する必要がある。これを、連続性のあるスケジュール、「ローリング・スケジュール」と呼ぶ。

ローリング・スケジュールは、計画を現実から遊離しないよう、引き留めつづけるための手法である。これを忘れて、「作りっぱなし」の計画をいくら量産しても、それではAPSの価値を十分に引きだしているとは言えないのである。