需要は出荷量からわかるか

生産計画の出発点は、需要情報だ。需要の数字があり、手元の在庫の数字があって、はじめてどれだけ生産によって供給すべきか、計算することができる。

それなのに、たいていの生産管理の本には、需要とは何なのかを、はっきりと書いていない。生産管理のパッケージはというと、どこからともなく需要の数字が忽然と現れて、入力すれば良いかのようにできている。

しかし、需要の数字は何をもとに誰がどう決めたらよいのか。多くの製造業では、販売(営業)部門と生産(工場)部門に根深い不信感があって、営業部が言ってきた需要予測の数値を、生産計画担当者が勝手変えて、計画のベースにしたりしている。そして言い訳していわく、「営業の予測は楽観的すぎる」「納期が甘すぎる」「販売目標の号令にすぎず、現実的とは思えない」等々。

しかし、かりにこのような組織論的な問題がなかったとしても、予測のベースとなるのは何か、という疑問は残る。過去の販売傾向を分析すれば予測のベースとなるはずだ、というのが普通の答えだろう。もしそうだとしたら、出荷実績を見ればいいことになる。販売管理システムから過去の出荷指示データを引っ張り出して分析すれば、実需の推移が分かるはずだ、と。果たして本当だろうか?

答えから言うと、それは間違いだ。出荷実績データを見ても、需要を表わしてはいないのである。なぜか? たとえば、ある出荷は、客先の要望する納期に10日遅れて出荷されていたのたかもしれない。あるいは、別の出荷は、客先の望んだ品目が欠品だったので、代替品を納めたのかもしれない。つまり、出荷実績というのは、実は『供給の最終的実績』を表わしているにすぎないのである。

需要の本来の内容を見たければ、もっとさかのぼって、実績ではなく要望の側を知る必要がある。では、それは営業担当者が最初に入力した受注情報だろうか? いや、そうとも言い切れぬ。なぜなら、その入力の前に受注をめぐる客先との交渉があって、本来の客先希望納期からすでにずらされていたり、品目が代替されている可能性があるからだ。

では、その情報はどこにあるのか。私が働くエンジニアリング業界などは、引合いの最初に調達要求書(Purchase Requisition)を作ってベンダーの営業担当者に渡すから、これが需要情報の本来の中身を示している、と言えるだろう。しかし、これは買い物のほとんどが注文生産品、というプラント業界の特殊性によっている部分が大きい。標準品のカタログ買いの世界では、調達要求書を毎回作ったりはしない。まして、末端消費者の買う最寄り品の世界では言うに及ばずだ。八百屋に野菜を買いに行くのに、調達要求書をもっていく人がどこにいるだろう?

需要情報とは、本来こうした性格のものであることを計画者は知るべきだ。予測が不確実、云々を議論する以前に、直近の需要実績を知ることすら、きわめて難しいのだ。だからこそ、そこに意志決定のプロセスが不可避なのであり、計画の技術が必要なのである。