SCE(Supply Chain Execution)ソフトとは何か

i2 Technologies社やManugistics社のコア・プロダクトは、ふつうSCMソフトに分類されている。他にも、SAP APOやOracle ASCPなども、この範疇に属するソフトウェアだと言われる。これらSCMソフトの特徴は、計画系の機能に秀でていることである。いわゆるERPパッケージが、実行系の機能を中核にしているのに対して、SCMソフトは企業の供給活動における計画プロセスの弱点を強化するために使われる。

ところで、上記のSCMソフト群を、最近ではSCP(Supply Chain Planning)と呼ぶことが多くなった。最後の単語をあえてManagementのMからPlanningのPに置換えた理由は何か。それは、SCE(Supply Chain Execution)ソフトという、新しいソフトウェアのカテゴリーが最近、急浮上してきたからである。

前者のいわゆるSCPソフトの主要機能は、(1)広域の生産・販売・在庫計画立案、(2)工場内スケジューリング、(3)需要計画、(4)販売枠管理(納期確約)、の4本柱である。これらはたしかに、すべて計画上の機能だ。ところで、計画系のSCPソフトに対し、ERPが実行系のシステムなのだとしたら、いったいSCEソフトとは何をやるソフトで、なぜそんなものが必要なのだろうか。

答は簡単だ。SCEソフトとは、工場の外で使うMES(製造実行システム)なのだ。工場の外、とはすなわち物流の現場にほかならない。それは倉庫であり、物流センターであり、また配車指示センターであり、またときにはトラックの車上であるかもしれない。SCEソフトは、こうした物流現場における、細かな荷物単位における指示と実績情報をつかさどるのである。

だが、こうした実行系の機能は、なぜERPソフトでは十分でないのだろうか?

その答えは、なぜ工場にMESが必要かを考えてみれば、自然にわかるだろう。ERPパッケージの『生産管理』が、工場単位・品目単位での生産オーダーや実績を見ているのに対し、MESの『製造管理』は生産ラインや作業区単位で、ワーク(仕掛品)の進捗や<ディスパッチング>を行なう。前者は1日単位で十分なのに対し、後者は最低でも時間単位である。必要な情報の粗さ(粒度)に、違いがあるのだ。それは、本社における生産統括部門と、工場における製造管理課の見ている、目の細かさの違いでもある(「SCM、ERP、MESそしてスケジューリング」http://www2.odn.ne.jp/scheduling/SCM/SCM-MES-ERP1.htmlの図を参照のこと)。

同じように、物流センターでの運用業務も、本社の物流企画部門がERPソフトの画面でのぞく情報よりも、ずっと細かな情報を必要とする。本社の発行する出荷オーダーにおいては、品目と数量と出荷先、納入日程度があればいいだろう。しかし、物流センターでは、品目の包装形態や荷姿、ピッキングの場所、物流加工の有無、出荷箱の手配、配車スケジュールと車両の到着時刻確認、等々の情報が必要になる。

主に米国を中心にして、SCEソフトと呼ばれるジャンルの製品が、この2-3年の間に急速に市場に現れ、頭打ち状態のSCPソフトをしり目に、成績を伸ばしている。日本でも優秀なベンダーが何社か現れた。今、日本では流通業界を中心とした物流システムの変革が、見えないところで静かに進行しており、物流センターの統廃合やリニューアルがさかんに行なわれている。今後、SCEソフトからはしばらく目が離せない状況が続きそうである。