部品表の精度

「BOM/部品表入門」第2章Q6

誰かに、あなたの会社の部品表(BOM)の精度はどれだけありますか? とたずねられたら、あなたは何と答えるだろうか。部品表の精度? 何だそれ? というのが、大方の反応ではないだろうか。

製造業において、精度という概念はたいてい品質管理にからんで使われる。加工精度とか、位置決め精度とか、施工精度とか。何らかの設計情報があって、それを製作し実現したときに、どれだけのばらつきの中に収まるかを調べるための概念だ。

それでは、設計情報そのものの表現である「部品表」について、精度を問う意味はどこにあるのか。全部正しいに決まっているだろう--そんな反論も聞こえそうだ。

ならば、こうたずねてみよう。あなたの工場の、在庫精度はどれだけですか? 在庫管理担当者なら、これにはすぐ答えられるはずだ。彼らは、定期的に「棚卸」業務を行なっている。在庫量には、理論在庫量と現実在庫量がある。期初の在庫量に入庫数と出庫数を足し引きすると、期末の在庫量になる「はず」だ。これが理論在庫量である。

理論は現実に本来一致するはずだが、いろいろな事情でずれが生じてくる。たとえば破損とか、臨時の戻し入れとか、品質チェック待ちとか。そのずれを更正する作業が棚卸である。そして、在庫精度は、理論在庫量と実際在庫量の差異によって、0.3%だとか1.4%だとか計算できる。

同じように、データの削除や追加のあるマスタ情報だって、量が多ければズレが生じる確率は高くなる。BOMは、まさに新製品や設計変更や改廃があるマスタ情報である。ことに、設計部品表(E-BOM)と製造部品表(M-BOM)の2種類が分立している会社なら、ズレの可能性も非常に高い。だとしたら、BOMの棚卸を行なって、現実の姿との差異をチェックし、精度を計算すべきだろう。

BOMの精度は次式によって定義される:

      BOMが正しく登録されている製品・中間製品の数
BOM精度=-----------------------
           製品・中間製品の全数

この正誤の判定は、直接の親子関係を単位として行なう。たとえばBOMのマスタ上で、製品Aが中間製品X2個と、購入部品Y3個からできており、中間製品Xは購入部品v1個とw4個からなるとしよう。しかし、工場での実際の製造工程は、z1個、w4個から作っているとする。その場合、XのBOMは誤りである。しかし、Aが事実X・Y1個ずつから作られているのならば、AのBOMは(孫に誤りがあっても)正しいと認定する。もしこの企業が、製品Aのみを作っているのなら、BOMの精度は1/2=50%である。

在庫数量に誤差があると、生産計画が狂ってしまうことは容易に分かるだろう。したがって定期的に棚卸を行ない、在庫精度を高める努力をすることは意義のあることだ。同様に、BOMが正しくないと、MRPの部品展開計算が正しく行えないから、製造スケジュールや購買手配がズレてくる。まともな生産計画や購買計画を支えるのは、精度の高いBOMなのである。

しかし現実には、BOMの精度をきちんと測って評価している企業は極めて稀だ。在庫棚卸作業は、会計報告上の必要から、最低でも半期ごとにふつう義務づけられている。しかし、目に見えぬ情報としてのマスタデータは、棚卸の必要がないと、みなが信じ切っているようだ。ここらへんが、実物経済の落とし穴だろう。

部品展開計算は生産管理の基本である。最近のERPパッケージの生産管理はほとんどがMRPⅡをベースにしているし、APSもまた部品展開を内部で計算する。こうした道具を使って生産を効率化したければ、基準情報であるBOMの精度に注意を払うべきだ。米国の生産管理コンサルタントの大御所オリバー・ワイトは、在庫精度が95%以上、BOM精度が98-99%以上なければ、MRPは導入しても使い物にならない、と書いている。巨額の情報投資を無駄にしないためにも、BOMの精度を向上させよう。