BOQ
Bill of Quantities

BOQとは、タスクの作業量をあらわす指標を指す。この用語には、まだ確たる訳語がない。強いて訳せば「作業量表」ということになりそうだが、エンジニアリング業界などではすでにそのまま3文字略語として、あるいは「B/Q」の2文字略語として流通しており、訳語の定着しないままつかわれる言葉の一つになる公算大である。

BOQは製品の原価企画ならびに生産計画において重要となる概念である。周知の通り、製造原価とは「材料費」「人件費(労務費)」「経費」の三つの部分からなっている。このうち、外部から購入する材料費の推算については、BOM(部品表)が基礎データとなる。製品をBOMに展開すれば、各部品(マテリアル)の所要量がわかるから、それに標準単価をかけて合計したものが、その製品の材料費になる。

それでは材料費とならんで原価の柱となる人件費は、どう推算すべきか? これは業種および生産方式によって異なる。たとえば化学産業のようにプロセス生産方式をとる業種では、基本的にオペレーターの数は、製品種別ではなく装置ライン構成に応じて決まる。個別のどの製品について何時間働いたか、というような集計はしにくい。したがって、総生産量の中の比率によって、固定した人件費を配賦することになる。

また自動車部品業界や電子部品業界のように、量産性の強い組立加工生産方式をとる分野では、生産量は製造ラインのサイクルタイムやタクトタイムによってきまる。このタクトタイムは、労働者の行う「繰返し動作」の数や種類に密接に関わっている。右腕を伸ばして部品を1個とる→横に1ステップ移動→左手でボルトをはめ込む→目視確認→・・・といった具合だ。それぞれの単位動作について、何秒かかるかがわかれば、1サイクルの作業時間がわかる。こうしたことを研究し改善するのが、IE(インダストリアル・エンジニアリング)分野におけるタイム・スタディであり、また生産スケジューリングも、工程の標準作業時間をマスタとして計算することができる。。

ところが、製品により個別性の強い業種では、こうはいかない。たとえば造船・航空機・産業機械といった産業である。また、建設業も、現場組立を行う一種の巨大組立加工生産だと考えることができる。こうした製造の現場では、サイクルの閉じた繰返し動作ばかりではない。そもそも、個別受注生産が主であるため、製品ごとの標準構成を決めることが難しい。では、原価推算や生産スケジューリングはどう行ったらよいのか?

そこで登場するのがBOQの概念である。BOQとは、労働時間を左右する作業量の指標である。たとえば、ある程度の量の金属配管を溶接する作業を考えると、溶接箇所や配管径など個別に見れば様々だが、全体の直接工の労働時間は、ほぼ溶接長さの合計に比例することがわかっている。そこで、配管溶接作業では溶接長がBOQの単位となる。配管製作図が決まれば、溶接箇所と径を拾い出して表とし、BOQ合計を算出することができる(溶接長合計は、配管材料の材料費には必ずしも比例しないことに注意してほしい)。

あるいは、電源ケーブル敷設の作業であれば、レイアウトがどうこみいっていようと、直接労働時間はケーブル長の合計にほぼ比例する。すなわち、ケーブル長がBOQの単位である。そこでレイアウト図からBOQ合計を求めれば、作業に必要な労働時間が次の式で計算できる。

「直接工の作業時間」=「BOQ」×「単位BOQあたりの作業時間」=「BOQ」÷「生産性」
「タスクの所要期間」=「直接工の作業時間」÷「投入人数」

BOQという概念は、19世紀末に英国で開発されたと言われている。そして、長らく建設業の世界で用いられてきた。しかし、あいにく日本の生産管理では、材料費としての物量と、作業量としてのBOQを区別して用いる習慣がうすい(モノと労働が一体に扱われている)。そのため、いったん生産方式が量産的な枠組みをはみ出すと、うまく製造原価がつかめなくなる現象が生じがちである。

今後、多くの製造業では、総合原価から個別原価へ、そして製品群単位の採算性に注目するPLM(Product Lifecycle Management)の思想が広まっていくと思われる。またこれと平行して、情報システム産業では、期間と進捗にもとづく進行基準原価管理が求められつつある。このような時代において、BOQの概念の重要性はこれからますます高まっていくと考えられる。