部品の展開と逆展開

部品の展開と逆展開



MRPの中心は資材所要量の計算である。製品の需要量が与えられると、そこから、その製品の手元在庫量を差し引いて、正味所要量をまず計算する。正味所要量の分だけ、工場で生産しなければならない。



そこで次に、その製品を構成するBOM(部品表)を参照して、製造に直接必要となる中間部品や資材の数量を求める。かりに製品Aを組み立てる最終組立工程において、部品x・部品y・部品zが、製品A=1個に対して、それぞれ2個・5本・1m必要だとしよう。もし、製品Aの正味所要量が20個だったとしたら、最終組立工程に部品x・部品y・部品zをそれぞれ40個・100本・20mずつ用意しなければならない。これを部品レベルの総所要量ないし従属需要量と呼ぶ。



さて、いま、工場の資材倉庫に部品xが25個あったとしたら、40個の総所要量のうち、残る15個を作っておかなければならない。これが部品xの正味所要量である。もし部品xを1個作るのに、さらに孫部品mと孫部品nを2枚と3個必要とすると(これは部品xの部品表に記述されているはずだ)、mとnはそれぞれ30枚と45個、用意しなければならない。



以下、外部から購入してくる原材料や末端資材になるまで、この計算を繰り返すと、製品A(中間製品と区別するため、最終製品End
Productと呼ぶことがある)の生産に対して必要な資材購買量が計算できる。これがMRPの部品展開計算である。



ここまでは、簡単な論理だ。初歩的な生産管理の教科書にも書いてある。ところで、MRPにおける部品の逆展開というのを御存じだろうか?



逆展開とは、この計算を逆にたどることだ(部品展開のことを英語でexplosionと呼ぶのだが、逆展開はimplosionと呼ばれる)。部品表を、下から上へ、子部品から親部品へとさかのぼる。部品mが10枚あると、親部品xや製品Aは、いったい何個作ることができるか? これに部品nが30個あったら、どうか。



この逆展開の計算は、納期回答をするときに必要になる。今、手元にある資材から考えて、すぐに作れる製品の数量はどれほどか。MRPの部品表には、リードタイム情報も同時に定義してあるから、納期も計算可能なはずである。また、製造設備にトラブルがあって、ある部品の製造が工程が止まってしまったときに、その影響する範囲を調べるのにも、逆展開機能は役立つ。



この逆展開計算は単純そうに見える。しかし、実際の工場では部品の共通化を進めているため、部品mが使われる最終製品はAだけではなくB・C・D・・と複数あるはずだ。また、部品mの手元在庫だけがあっても、他の部品がなければ製品は作れない。したがって、製品に価格や優先順位などがある場合、どれを作るべきかという問題を、逆展開計算は内包してしまう。たとえて言うならば、部品展開計算が“多項式の展開”だとすれば、逆展開は“因数分解”なのである。前者はある意味で、機械的に計算可能だ。しかし、因数分解は、人間の発見的な知恵や定石が必要になる。正確な納期回答がAPSを必要とする所以は、ここにあるのである。



Follow me!