BOMプロセッサ

設計部品表(E-BOM)と製造部品表(M-BOM)が二元化してばらばらの状態にある。これを統一したほうが良い。そう決意したら、実際に必要になるものは何か。

こういう時に、まず何かソフトウェアを導入して、それからデータを整理・統一し、そして保守・運用主体の部門を決める、という順序で進めるのはあまり賢いやり方ではない。まずツールありき、というのはソフトウェア・ベンダーの販売の都合には合致するかもしれないが、必ずしもユーザのためにはならない。とくに、BOM再構築のように『クロス・ファンクショナル』な課題ではそうだ。

BOMの統合は、前にも述べた「広義のBOM」の視点が必要になる。そして、広義のBOMの中心にあるのは、マテリアル・マスタである。このマスタは、じつは非常に関連ユーザ部門が多い。製造業においては、設計・生産技術・生産計画・購買・在庫管理・製造・物流・販売・保全・サービス・財務、とほとんどあらゆる部門が『物品』とその属性データを参照しながら仕事をしている。また、場所的にも、本社・工場・物流センターというふうにバラバラに離れているかもしれない。

このように複数の部署がかかわりあうマルチ・ファンクショナルな課題で、かつ業務プロセスが確立しておらず、権限・責任体制も不明確な場合は、まず目的を定め、運用イメージを固めるところから着手しなければならない。どこまでの範囲まで統合するかを、先に考えておく必要があるのだ。

次に必要になるのは、データ項目の洗い出しと、実際データの収集・整理である。既存データには、いろいろなゴミや誤りや重複などがたいていあるから、いわゆる「データ・クレンジング」の作業が必要になる。この段階で疲れ果てて挫折してしまわないよう、外部リソースを活用するなど、予算と余裕をみておきたい。

そして、きれいになったマスタ・データを最後に一元化するための器に流し込む。この器が、「BOMプロセッサ」である。では、こうした幅広い業務範囲で利用されるマスタ・データを統一するとしたら、BOMプロセッサとしては具体的にどういう選択肢があるか。

おもな選択肢は三つ考えられる:
(1)ERPパッケージのマスタ管理機能をつかう
(2)専用のBOMプロセッサのパッケージを導入する
(3)自社でBOMプロセッサを手作りする

(1)のERPパッケージは、たしかに幅広い業務範囲をサポートしているから、理屈の上では良さそうに思える。しかし、現実の製造業では、設計業務や生産技術(量産準備)業務までERPでこなしている企業はかなり少ない。かりに実現していたとしても、カスタマイズの山となるケースが多い。

では、(2)の専用BOMプロセッサはどうか。こうしたソフトは、CADやPDMベンダーが作っており、設計業務にはななり親和性が高い。また、設計変更に伴う影響範囲の逆展開・特定など、構成管理の機能も充実していて、良さそうに思える。しかし、逆にいうと運用イメージが設計業務中心であって、とても物流や販売や会計(原価)管理までの属性に手が回りきらないうらみがある。

ということで、現実には(3)の手作りが、一番フィージブルな解だということになる。欠点は、“今どき手作りかよ”という批判(逡巡?)が出そうことだろうか。しかし、パッケージソフトがつねに万能でないことは、次第に多くのユーザが気づきはじめているように思う。

自社用のBOMプロセッサを作ったら、あとは他の業務システムのマスタに対して、そのデータを転写するようにする。そして、大本のデータは必ずBOMプロセッサに追加・更新をかけるような運用イメージをつくるべきである。

製造業のDNAであるBOMデータを守りたければ、その会社のニーズに最も合致したBOMプロセッサを持たなくてはならない。データとはつねに、ソフトウェアよりも寿命が長いのだから。